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宮本輝の自伝的小説、37年かけ完結 父の宿命とは?

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NIKKEI STYLE

作家の宮本輝が37年書き続けた自伝的大河小説「流転の海」シリーズ(新潮社)が、10月末刊行の第9部「野の春」で完結する。「運とは何かと考えたことで生まれた作品」と振り返る。

「書き終えたのは4月6日。(400字詰め原稿用紙で)7000枚の小説の最後だったので、もっとドキドキするかと思ったが、気づいたら終わっていました」。しばらくして感慨がわいてきた。「読者に対して責任が果たせたという安堵感。その後『よくやった』と自分をほめる気持ちが生まれた」

父がモデルの主人公、戦後を生き抜く

主人公「松坂熊吾(くまご)」は父の宮本熊市さんがモデル。熊吾は1947年、50歳にして初めての子供「伸仁」を授かり、息子が20歳になるまで生き抜くことを誓う。闇市での自動車部品会社再興に始まり、大阪、愛媛、富山などで様々な事業に乗り出すが、周りの人間の裏切りもあって、なかなかうまくいかない。

最終巻「野の春」は66~68年の大阪を舞台とする。中古車販売店を経営する熊吾は、愛人との関係が原因で、妻の「房江」や伸仁とは離れて暮らす。伸仁の20歳の誕生日は3人で祝うが、熊吾の健康が悪化する。「父は功罪相半ばする人だったと思うが、頼ってくる人にはとことん応えた。それを恩に感じた人々が火葬の場に駆けつけてくれた。熊吾の死の場面はそのまま書けばいいだろうと考えた」

82年、文芸誌「海燕(かいえん)」(福武書店=現ベネッセコーポレーション)で連載を始めた。34歳のときだ。「編集長の寺田博さんから『父と子の物語をどうか』と言われた。当初は結核療養中だったこともあり『おやじのことはまだ生々しい』と断った。『錦繍(きんしゅう)』を書き上げ、『ドナウの旅人』の海外取材にも行けたことで、体力的にも精神的にも自信を持ち『流転の海』に取りかかった」。第2部「地の星」以降は文芸誌「新潮」(新潮社)が連載の舞台となった。

「自分の自尊心よりも大切なものを持って生きにゃあいけん」など、作中には熊吾の印象的な言葉がちりばめられている。それは父が実際に語ったものという。「思弁的なことを話す人でした。書物から学んだ知識が多かったと思います」と懐かしむ。

「父は知り合って2日もたつと、みんなから『大将』と呼ばれるような人だった。でも戦後は坂道を転げ落ちるようにして運から見放された。そうした宿命、星回りは何だろうと考えたことが、この小説を書くきっかけの一つになった」

伸仁の健康を考えて故郷の愛媛に戻る第2部あたりから「モデルはいるが、どこまでも小説でいくんだと割り切った。それによって書きにくいことも書けると考えた」。当然、虚と実が入り交じる。「どれが実話かは秘密。編集者からも『これは本当にあったことですか』と尋ねられるたび『聞かないでくれ』と答えていた」と笑う。

存在感高める母のたくましさ

もっとも、次第に存在感を強める房江の姿は実話に基づくと教えてくれた。「父の姿に隠れていた母が自立を目指し、ホテルの社員食堂で働き始める。僕もそこでアルバイトをしましたが、その変貌ぶりは息子から見て驚きでした」。ほかに熊吾と関係の深い「海老原太一」「柳田元雄」といった実業家にもモデルがいたことをほのめかす。

終戦直後からその後の復興、高度経済成長の時代まで社会の動きも濃密に描く。「時代というリアリティーがないと物語は成立しない。新聞記事を読む場面を入れたり、食べ物の値段を書いたりすることで、世相を表すように心がけた」

現在、文芸誌「文学界」(文芸春秋)で初の歴史小説「潮音」を連載中だ。「庶民の目から明治維新をとらえたいと思った。さすがに9巻まではいかないが、そこそこ長くなりそうです」と意気込む。

(編集委員 中野稔)

[日本経済新聞夕刊2018年10月23日付]

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