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ふわりと香る繊細な甘み 福井・若狭のアマダイ

2018/10/18付 日本経済新聞 夕刊

アマダイ独特の繊細な甘みを引き立てる「若狭焼き」は京料理でも定番の一つ(小浜市の若杉末広亭)

福井県南部(嶺南地方)はかつての若狭国で、朝廷に食料を納める「御食国(みけつくに)」の一つでもあった。現在、その若狭を代表する水産物が、京料理で食材として使われるアマダイだ。中でも「若狭ぐじ」の名前でブランド化されたものは高級品として知られる。

若狭ぐじに認定されると、港と漁船の名前の入ったラベルが付けられる(小浜港)

嶺南地方で、はえ縄漁もしくは釣りで漁獲したアカアマダイの中から、重さ500グラム以上で姿形が美しいものを選別し、さらに専用の保冷ボックスを使うなど鮮度管理も徹底させているものだけが「若狭ぐじ」と名乗ることができる。福井県漁業協同組合連合会小浜支所によると、取り扱うアマダイのうち若狭ぐじに分類されるのは3割から4割(重量ベース)程度だ。

今は1年中漁獲されているが、旬とされるのは夏から秋にかけてのシーズンだ。今年は7月ごろは漁獲量が少なかったが、秋になり例年並みのペースになっているという。

代表的な食べ方は、一夜干ししたものをうろこを付けたまま焼く「若狭焼き」だ。焼くときに、うろこがけば立たないように酒やみりんなどの調味料を塗っておくことが多い。福井県小浜市の料理宿、若杉末広亭の浅野麻由美さんは「こうすると蒸し焼きのような状態になり、ふわっとした食感になる」と話す。

身が軟らかく、淡泊な味わいの若狭ぐじならではの調理方法といえるだろう。うろこに塗る調味料は「料理人ごとに独自のノウハウを持っている」そうだ。

小浜市の海岸近くにある食彩ごえんの後藤幸江さんのお薦めは「一本焼き」。うろこを取り、塩水に30分程度つけたぐじに串を打って丸ごと焼き上げる。「地元の人は若狭ぐじにならない小さいアマダイをよく食べるが、そういう時はうろこを取って塩焼きにすることが多い」という。地元流の食べ方としてはほかに冬場のかす漬けなどもある。

濱の四季の「若狭のぐじ御膳」は「若狭ぐじ」にならないサイズを手軽に味わえる

小浜市などが出資する第三セクター、まちづくり小浜おばま観光局が運営する濱の四季では、今年7月から「若狭のぐじ御膳」をメニューに入れた。ブランド化された若狭ぐじではないが、地元のアマダイを手軽に食べてもらうことで、観光で来た人に若狭の産品の良さを知ってもらう狙いもある。

2023年、北陸新幹線は嶺南地方の敦賀まで延伸される。観光客の拡大が期待できる中、アマダイは若狭を代表する食材として今後も重要性を増すだろう。

<マメ知識>若狭ぐじ取扱量 28%増
アマダイはタイ科ではなく、アマダイ科の魚。シロアマダイ、キアマダイなどもいるが、若狭で水揚げされるのはほとんどがアカアマダイ。夏から秋にかけての時期、若狭湾では船で1時間半ほどの沖合で、水深が75~80メートルほどの場所で取れている。
福井県漁連小浜支所の2017年度取扱実績は、アマダイ全体が2万1306キログラムと前年度比ほぼ横ばいだが、このうち若狭ぐじは同28%増の8117キログラム。若狭ぐじの尾数は1万3242尾に達し、このうち800グラムを超える大物は1177尾だった。

(福井支局長 小口道徳)

[日本経済新聞夕刊2018年10月18日付]

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