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更年期症状改善に一役「エクオール」 大豆由来の成分

2018/10/19 日本経済新聞 朝刊

更年期症状の対策として大豆イソフラボンを摂取する女性は多いが、実はイソフラボンが体内で分解されてできる「エクオール」という成分が鍵を握る。ただ日本人でエクオールを作れるのは2人に1人で、若い女性はさらに少ない。サプリメントの種類が増えており、更年期症状や生理不順の改善に効果があるとされるが、効果には個人差がある。従来のホルモン補充療法を含め、どの手法がよいのか医師と相談して決めよう。

40代女性はパソコン作業中に指の痛みを感じた。最初はしびれだけだったが、次第にこわばりなどを感じ始めた。骨の変形もあり、整形外科では治らなかった。婦人科を訪れると「更年期症状」と診断され、エクオールを含むサプリを飲んで女性ホルモンを補った。

更年期になると女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が減り、閉経の前後5年ごろから様々な症状が現れる。エストロゲンが足りないとき、代わりに働くのがエクオールだ。大豆製品に含まれるイソフラボンを摂取すると腸内細菌で分解され、エクオールができる。エストロゲンと構造や働きが似ている。

エストロゲンの減少でほてりやのぼせなどの更年期症状が出る。手のこわばりもその一つ。7~10年ほど放置すると、手指の関節が変形する「ヘバーデン結節」などを発症することがある。だが多くの女性は女性ホルモンの急な減少に伴う更年期症状と気づかず、整形外科などを訪れがちだ。

エストロゲンが不足しても、必ずしもエクオールで不足分を補えるとは限らない。名古屋大学発ベンチャーのヘルスケアシステムズ(名古屋市)の研究では日本人のうち、エクオールを作れる菌を保有するのは約半分。作れない人はイソフラボンの一種であるダイゼインがそのまま吸収されるとみている。

■若年層の豆離れ

20~30代の若年層でエクオールを作れる人は欧米並みの30%程度に減ったという。豆類を食べる量が減ったのが原因のようだ。厚生労働省の調査では、20~30代の豆類摂取量は政府が定めた目標に対して達成率が約5割にとどまる。60代の約8割を大幅に下回る。

更年期症状をきちんと改善させる手法では、病院での注射などによるホルモン療法が主流だ。ただ欧米に比べ日本では乳がんリスクが高まるとの見方が強く、普及が進んでこなかった。

ほかの病気との関連からホルモン療法を受けられない人にとって、エクオールの摂取が選択肢に入る。大豆製品からイソフラボンを摂取してもエクオールに分解できない体質の人にとっても、サプリなどで直接、摂取することができる。

手の変形が進むと手術が必要になることもある。四谷メディカルキューブ(東京・千代田)の手の外科・マイクロサージャリーセンター長の平瀬雄一医師は「手の変形に伴う痛みがひどくなる前に、エクオール検査やサプリメントによるエクオールの補充などを始めるとよい」と話す。

注意すべき点はある。体質や体調によって効き方に差があり、ホルモン療法に比べ効果が表れるのに時間がかかる。人によってはホルモン療法との併用がよい場合もある。決められた量以上を摂取し続けると、乳がんを発症するリスクも指摘される。病院で処方される薬剤はないので、ドラッグストアなどで購入する。どの手法を選ぶかは医師と相談して慎重に決めたい。

最近はサプリの種類が増えており、品質にばらつきがあるので見極めが難しい。平瀬医師は合成ではなく天然由来の成分を発酵させて作ったサプリを勧める。

■検査キットを活用

一部のクリニックで体内でエクオールを作る能力があるか検査できるが、郵送でも手軽に分かるサービスもある。ヘルスケアシステムズは、イソフラボンをエクオールに分解できるかどうかを簡単に調べられる検査キットを販売する。

尿などの検体を同社に郵送すると、しばらくして分析結果が文書で送られてくる。豆類をたくさん食べるなど食生活を見直すきっかけにする人も多い。

◇  ◇  ◇

■ホルモン作用の研究 課題多く

東京医科歯科大などの調査によると、最初にエクオールが発見されたのは1930年代。妊娠中の牛の尿から取り出された。80年代に人の尿で見つかり、イソフラボンの代謝物だと分かった。90~2000年代にかけて米国の研究チームで研究が進んだ。東京医歯大などが、ホルモン関連の病気はエクオールの産生体質に関わることを解明した。

人への影響など臨床に近いデータはここ数年で急激に増えた。同大の麻生武志名誉教授は「まだ歴史が浅いともいえる」と話す。

サプリメントの発売は10年代になってからで、まだ人の健康への影響に関するデータは十分と言い難い。臨床の現場で治療指針を決める際によく使われる書籍などに、エクオール摂取に関する解説が加筆されたのも最近だという。ホルモンの作用は非常に複雑なことも多く、研究課題は多い。

麻生名誉教授は「長期的な摂取の影響をみることやデータを積み上げていき、今後の経過を丁寧にみる必要がある」と指摘する。

(猪俣里美)

[日本経済新聞朝刊2018年10月15日付]

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