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石牟礼道子の遺志継ぐ新作能 衣装は旧友・志村ふくみ

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NIKKEI STYLE

2月に亡くなった作家、石牟礼道子原作の新作能「沖宮(おきのみや)」が熊本で初演された。染織家の人間国宝、志村ふくみの衣装、金剛龍謹(たつのり)のシテにより、石牟礼の遺志が死と再生の物語として結実した。

6日夕、初演の会場となった熊本市の水前寺成趣園能楽殿に約400人の観客が詰めかけた。台風25号の影響で屋外にある能舞台での開催は直前まで危ぶまれたが、開演の午後7時が近づくと雨風はやみ、雲の切れ間からは星空がのぞいた。次第に暮れていく夜空を背景に、明かりに照らされた能舞台が浮かび上がった。

「沖宮」の舞台は島原の乱後の天草。村長(むらおさ)に伴われて白い衣装をまとった幼い少女あやが現れる。あやは島原の乱で命を落とした天草四郎の乳母の忘れ形見。身寄りがないことから、干ばつに苦しむ村のため、雨の神である竜神にささげる人柱に選ばれる。雨乞いの祈りをささげるあやのもとへ四郎の亡霊が訪れ、2人は竜神の導きで海底にある沖宮へと旅立つ。

新作能の構想は2011年に始まった。東日本大震災の直後、現代日本への危機感を募らせた京都在住の志村が30年来の友人で熊本で暮らす石牟礼に手紙を送った。その後、2人は手紙のやりとりを重ねる。最後の作品として天草四郎を題材にした新作能に取り組んでいた石牟礼は、志村が贈った染め糸から着想して「沖宮」を書き上げ、志村に衣装制作を依頼した。

天上の青と紅

志村が手掛けた衣装は四郎の水衣、あやの長絹、竜神の狩衣の3点。他は京都を拠点とする金剛流が所有する能装束を合わせた。四郎の衣装は臭木(くさぎ)という木の実で染めた水縹(みはなだ)色がベース。志村が「天上の青」と呼ぶ水縹色は、藍で染めた水色と異なりくすんだ緑がかったような色彩だ。

沖宮への道行(みちゆき)のためにあやがまとう緋色(ひいろ)の衣装は紅花で染めた。紅花は植物の中で唯一、花で色を染めることができる「天上の紅」(志村)で、無垢(むく)な少女にふさわしいという。どちらも生前に石牟礼が選んだ色だ。

金糸や銀糸を織り込んだ豪華な能装束に比べて質素なようだが、舞台上では内から発光するような光沢を放ち、神秘的な雰囲気を醸し出した。シテの四郎を演じた金剛流若宗家の金剛龍謹は「色でテーマを表現するということは普段の能にはないことだが、大きな導きになった」と話す。

石牟礼の原作そのままでの上演は難しく、能らしい七五調の詞章に改め、登場人物を絞るなどの変更を加えた。一方、雨乞いの儀式の場面では原作の言葉をそのまま用いた。「石牟礼先生らしい言葉の選び方をできるだけ生かすよう作った」と龍謹は言う。

命の再生伝える

終盤に登場する竜神はダイナミックな舞を披露し、能らしい見どころとなった。原作にはない役だが、石牟礼が志村に宛てた手紙の中で、竜神を登場させる構想を明かしていた。前シテで四郎、後シテで竜神と、同じ演者が勤める案もあったが、「最後のシーンは原作通り、四郎とあやが旅立つ象徴的なシーンは残したい」(龍謹)との考えから、父で金剛流宗家の永謹(ひさのり)を竜神役に両シテが登場する形にまとめた。

石牟礼は生前、「沖宮に行くのは、死ににいくんじゃない、生き返るための道行なんです」と語っていたという。濃い藍色の衣装をまとった竜神の先導で、水縹色の四郎と緋色のあやが並んで揚げ幕の奥に消えていく幕切れは、色の対比が印象的だ。やんでいた雨が再びパラパラと落ちてきたのは天候の偶然だが、まるで雨乞いの祈りが聞き届けられたかのようだった。

志村の孫で今公演の企画・制作を担当した志村昌司は「石牟礼さんと祖母の思想を若い世代にどう継いでいくかが大きなテーマの一つ。金剛流若宗家をはじめ、若い人たちに演じてもらい、命の再生を伝えたい」と力を込める。20日に京都・金剛能楽堂、11月18日に東京・国立能楽堂で上演する。

(小国由美子)

[日本経済新聞夕刊2018年10月15日付]

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