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引き締まった身、黄金の逸品 神奈川・三浦の松輪サバ

2018/10/11付 日本経済新聞 夕刊

松輪の「とろサバあぶりたて」は注文を受けてからバーナーであぶる

神奈川県三浦市の松輪港で水揚げされる松輪サバは引き締まった身にほどよく脂が乗った逸品だ。8月半ばから11月ごろの旬の時期には、体表に黄金色の帯が入るように見えるため「黄金のサバ」とも呼ばれる。

松輪サバをさばく輪中の宮尾武氏

松輪サバが市場関係者や料理関係者から高く評価されるのには理由がある。えさが豊富な東京湾内で一本釣りしたマサバを、漁師が直接手を触れないように特殊な器具を使って釣り針から外し、船の上ですぐに氷水につける。そんな手のかかる釣り方をしたマサバの中で、一定の大きさを超えたものしか松輪サバを名乗れない。一般的なサバの10倍の値段がつくこともあるという。

松輪間口港そばの日本料理店、輪中(わなか)ではサバづくしを味わえる。ディナーコースは南蛮漬け、うま煮、刺し身の三点盛り、塩焼き、みそ煮、サバ茶漬けなど約8品。目の前の港でとれたての魚を使うため、珍しい生のサバの刺し身も登場する。塩焼きやみそ煮もしつこさがなく、たくさん食べても飽きが来ない。

新鮮なサバを生の刺し身で提供する(三浦市の輪中)

店主の宮尾武氏(56)は長野市で和食店を営んでいるが、廃業した松輪の親戚の旅館の建物を引き継いで、8~11月の漁期に限ってこの地で店を開く。サバについては「なにより漁師の魚の扱い方がよい。港が目の前なので、その日にとってきた魚をすぐに料理できる」と冗舌だ。

みうら漁業協同組合直営の日本料理店、松輪の一押しは「とろサバあぶりたて」。注文を受けてからバーナーであぶったサバの半身を盛りつけた料理で見た目は豪快だが、サバ本来の風味に香ばしさが加わって食欲をそそる。店長の本田英之氏(45)は「上品な脂の乗り方をよく味わってほしい」と話す。

松輪江奈港に面した店内からは漁船や釣り船が行き交う様子がよく見える。晴れた日には房総半島の山並みや大島の景色を楽しみながら食事を楽しめる。

東京都内で松輪サバを味わいたいなら、中央区京橋の京ばし松輪を訪ねてほしい。旬の時期に夜のおまかせコースの中でサバ料理を提供する。「脂の乗りや身の締まりが他の産地のサバとは全く違う」というのは料理長の田中平八郎氏(50)。締めのバッテラは特に常連客に好評だ。

関係者を悩ませているのが近年の不漁だ。海洋環境の変化のせいか、乱獲の影響か、見方は様々だが、店によっては予約を断ったり、他の料理を勧めたりせざるをえないことが増えている。

<マメ知識>江戸から盛んな一本釣り
東京湾の入り口にあたる三浦半島の東南端に位置する松輪地区では江戸時代から一本釣り漁が盛んだった。松輪のサバが注目を集めるようになったのは1991年、市場の仲卸を通さず、漁協による共同出荷を始めたのがきっかけだ。鮮度・品質管理などを徹底した結果、料理関係者らプロから高い評価を得た。2005年から漁協を中心にPRに力を入れ、一般にも徐々にブランドが浸透した。06年には大分市佐賀関の関サバとともに、特許庁から地域団体商標(地域ブランド)の認定を受けた。

(横浜支局長 伊藤浩昭)

[日本経済新聞夕刊2018年10月11日付]

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