映画『止められるか、俺たちを』 若者たちの熱い息吹

「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」に続く白石和彌監督の新作であり、若松孝二監督亡き後の若松プロの再開第1作。1969年春から71年晩夏に至るまでの若松プロの活動を、助監督だった一人の女性の目を通して描いた青春群像劇である。

白石監督をはじめスタッフも、またほとんどのキャストも晩年の若松監督に薫陶を受けたいわば門下生。そのため映画化に際して一種のイミテーションに陥る危険があるとはいえ、映画はそれを超えて当時の若松プロに集った映画好きの若者たちの熱い息吹を生き生きと伝えてくれる。

新宿の盛り場にたむろする21歳のめぐみ(門脇麦)は、仲間に誘われ若松プロの助監督になる。若松監督(井浦新)はピンク映画を中心に斬新な映像表現で若者の支持を受け、若松プロには映画好きな若者が出入りしていた。助監督の仕事は厳しかったが、めぐみは映画作りの面白さにのめり込んでいく。

主人公のめぐみをはじめ登場人物はすべて実在の人たち。足立正生、秋山道男、小水一男(ガイラ)、沖島勲、高間賢治、荒井晴彦、大和屋竺、福間健二ら錚々(そうそう)たる名前が登場して、日本映画史の一端を垣間見るようで面白い。

そんな若き映画人たちと交遊しながら、めぐみは製作現場で懸命に働く。やがて若松プロにも政治の季節が浸透してくる。めぐみはそんな空気に距離を感じながら、自分の生き方や表現したいものを探して悩み模索するが……。

当時の日本映画は黄金時代が終わり、どん底の時期である。そんな中、若松プロは弱小ゆえの挑戦を試みて多彩な若い才能を結集した。この再現映画が若松監督に教えを受けた映画人によって製作されたことは、ノスタルジーを超えて、当時の冒険心を受け継ぐ意志を示しているようで好ましい。1時間59分。

★★★★

(映画評論家 村山匡一郎)

[日本経済新聞夕刊2018年10月5日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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