腕立てができなくてもOK カンタン体幹トレーニング
胴体にある「体幹」は体の芯を支えている。この力が低下すると、疲れやすさや体形の崩れ、腰痛などを招く。体力に応じた運動で体幹を刺激し、力を発揮しやすい体を作ろう。
体幹といえばお腹周りや腹筋をイメージする人は多い。実はそれだけではなく、胴体のうち、内臓が詰まった「腹腔(ふくくう)」を囲む部分を指す。胸郭と肩甲骨、背骨、骨盤と、それらを取り巻く表層筋と深層筋(インナーマッスル)全てと考えてほしい。
体幹部は内臓を所定の位置に収める働きと姿勢の保持、体を動かす機能を受け持つ。特に、上半身と下半身の動きを連動する大切な役割を担う。
体幹の筋力が低下すると、腹圧が下がり、下腹部がポッコリと突き出たようになる。その結果、内臓機能や基礎代謝の低下、脊柱の乱れによる腰痛が起きる。さらに、姿勢の乱れや免疫力の低下を引き金に、疲れやすい身体になっていく。
体幹を鍛えるには、両肘とつま先を床について体を支え、背中を床に平行になるようにまっすぐ保つ「腕立て(プランク)」が適している。ただ、きつい運動に抵抗を感じる人も多い。そこで、体力に自信がなくてもできる体幹トレーニングを紹介したい。
まずはデスクワークの合間にも取り組める「基礎編」から。椅子に浅く腰掛けて、両腕を肩の高さで前に伸ばす。片方の肘を後ろに引きながら、上体を背もたれギリギリまでゆっくり倒してから戻す(上体ひねり)。上体を倒す角度を小さくすると、負担は軽くなる。
続いて、同じ座り方で腕を伸ばし、両手を組む。腕を前に動かしながらお尻を上げて、元に戻す(お尻上げ)。背筋を伸ばしたまま、下腹に力を入れて股関節を畳むようにする。
次は、胸元に両手を添えて、左右に上体をゆっくり倒す(横倒し)。最後は椅子に深く腰掛け、片脚を浮かせて伸ばしながら、上体を伸ばした脚と反対側へひねる(全身連動ひねり)。
体力に自信のある人は「上級編」を試してみよう。安定した机に両手をつき、両足をそろえて後ろに引いた姿勢で、頭からつま先までまっすぐ伸ばして5~10秒静止(体幹キープ)。
このポーズから、左右交互に膝を曲げて、まっすぐ上に引き上げる(ストレートもも上げ)。慣れてきたら、膝を体の内側に向けて引き寄せよう(インサイドもも上げ)。
最後は横向きのポーズ(横向きでキープ)。机に片手だけついて、全身を斜め一直線に保つ。余裕があれば反対側の腕を上げて、両腕を一直線に伸ばそう。
いずれも下腹部をへこませるようにするのがポイントだ。お尻を突き出したり、逆に脱力しておなかが前に出たりすると、肩や腰を痛めるので注意したい。
筋肉は一日にしてならず。刺激しなければ衰え、使い過ぎれば壊れる。体幹筋力の衰えは、高齢者の歩行能力や転倒の発生にも影響を及ぼす。日常生活にうまく取り入れて、気負わず少しずつ続けよう。
(早稲田大学スポーツ科学学術院 荒木邦子)
[NIKKEIプラス1 2018年10月6日付]
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