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ホテルで培ったノウハウが、今も接客の根底にある

10月に関西に行くがお店にいますか――。エディオン伊丹店(兵庫県伊丹市)で季節家電を担当する吉村悠臣さんには、関西以外から電話でこんな問い合わせが来る。いずれも以前勤めていた店舗で接客をした縁だという。相手の話をよく聞き、提案するという基本を徹底した営業で、好印象を残す接客を実現。大手量販店でも個人として存在感を示している。

残暑を感じる9月中旬、平日の昼間に店舗を訪れると「おしぼりとお茶はいかがですか」と勧められた。「せっかく店舗に足を運んでくれたお客さん。お待たせすることもある。何かできないか」と考え、吉村さんが自発的に始めた取り組みだ。始めたのは8年ほど前で、飲み物のサービスは今では他店舗にも広まった。

ちょっとしたサプライズを提供することが信条だ。吉村さんには常連や、常連の紹介で来店した客も多く訪ねてくる。例えば「カーテンがほしい」という客には売り場で説明をしながら、他の困りごともさりげなく聞き取る。無料のリフォームの見積もりを提案してみるなど、言われる前に提案する先回りが、客に驚きと強い印象を与える。

接客すると、手帳に客のニーズや情報を書き込む。手帳の中身は定期的に整理し、まとめ直す。この情報を次の接客に生かせば、常連になってもらえる関係が築ける。伊丹店を含めて関西の6店舗で勤務。「これまで記録したお客さんを数えたら556人だった」

インターネット通販の普及が急速に進む今、店舗だからこそ感じられる商品の魅力や機能の説明を最も重視する。現在担当するエアコンの進化はめざましい。来店客には実際に10メートルくらい離れたところに立ってもらい、気流がどこまで届くのかを確認してもらうなど、機能を肌で感じられる店作りにこだわる。

メーカー側との協力も進めてきた。京都市内の大型店舗に勤めていた時、英ダイソンの掃除機が発売になった。今でこそ日本で人気のメーカーになったが、当時は国内メーカーと比べて大きくて重い、音がうるさい掃除機という印象が強かった。価格も高く、販売する吉村さんも売れるかどうか懐疑的だったという。

そこで実際に来店客が掃除機をかけるコーナーを設置。今でこそ当たり前になった、使ってもらいながら説明する方法が功を奏し、高級品にもかかわらず2日で約30台を売り上げた。

2003年にエディオンに入社した吉村さんの接客業のルーツは一流ホテルにある。人に喜んでもらえる仕事を志し、京都市にある老舗ホテルでベルボーイやバーテンダーとして約5年間勤めた。トップレベルの接客が求められる場で、話しかけやすい第一印象や、相手の話を上手に聞く術を培った。ホテルが外資系になるのを機に同社に転職。家電量販の業界に足を踏み入れた。

「私たちの存在価値は、お客さんに見て触って納得して、楽しんでもらうこと」と言い切る。エディオンはネット通販に力を入れるが、家電とリフォームの一体営業なども成長の軸に据えている。こうした戦略を、吉村さんのような売り場の工夫が支えている。

(大沢薫)

[日経MJ2018年10月1日付]

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