映画『クレイジー・リッチ!』 移民の価値観巡る闘い
中国移民の母と彼女たちのアメリカ生まれの娘。2つの世代の間に生じるギャップを軸に人生や愛が語られた『ジョイ・ラック・クラブ』(1993年)以来という、アジア系のスタッフとキャストで固めたアメリカ映画が誕生した。
生まれも育ちもニューヨーク、中国系アメリカ人女性レイチェル(コンスタンス・ウー)が恋人ニック(ヘンリー・ゴールディング)の親友の結婚式に出席するため、彼の故郷のシンガポールを訪れた。彼はなんと大富豪の御曹司だった。
ここから始まる大富豪一族のケタ外れの金持ちっぷりと、中国移民の母を持ち、大学の経済学教授の職にあって堅実に暮らすレイチェルの価値観の違いをめぐる闘い。ルーツは同じアジアでもあまりに違う。
シンガポール出身のケヴィン・クワンが自身の経験を基に書いたベストセラー小説が原作。シンガポールとマレーシアにロケして台湾系アメリカ人ジョン・M・チュウが監督した。
結婚式前夜の独身お別れパーティーの派手さ。レイチェルの前には、息子が勝手に連れてきた女が不満の母親エレノア(ミシェル・ヨー)がたちはだかる。ニックの元カノで一家の顧問弁護士の女性は、よりを戻したい。ニックの絶世の美女の従姉妹は、格下コンプレックスの夫の浮気に苦しむ。玉の輿(こし)に群がる女たちと女の人間模様を見せるその先にニックの母がいる。
顔はアジアでも中身はアメリカンのレイチェルが、ニックの母エレノアには許せない。名門大学卒業の肩書を捨て、夫につくしてきたのに、姑に嫌われる嫁エレノア。でもレイチェルは「私は違う」と反発する。
この意志の強さと仕事で培った自信こそ、アメリカが育てたアジアの血の力。少しの弱気は、ニューヨークから飛んできた母の助けで消えて自信回復。恋の甘みが薄いのが難……ですか。2時間1分。
★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2018年9月21日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。