エンタメ!

映画セレクション

映画『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』

2018/9/21付 日本経済新聞 夕刊

試験のカンニングを主題に、スマートでスピーディーなかたりくちでスリルを満喫させる一方、青春のドラマとしても味が深い。

東京・新宿の新宿武蔵野館で公開(C)GDH 559 CO., LTD. All rights reserved.

21世紀になってから、タイ映画の新しい才能を結集して設立されたGDH559の作品。同社は、脚本に時間をかけることで知られ、中国で実際におこった事件をヒントにしたこの映画も、監督ナタウット・プーンピリヤをふくめた3人の脚本家チームが、1年半かけてかいた。構成の緊密さ、快速展開なのにわかりやすいのは、そこからくるのだろう。

主人公の少女リンは、幼いときから天才的に勉強ができる。高校はグレードの高いところに入学するが、奨学生なので学費無料。収入のすくない父のこともかんがえてだ。

友だちになったグレースは、勉強がにがて。つい試験中、消しゴムに答えをかいてわたしてしまった。

そこから、グレースのボーイフレンドのパットやその友人たちにたのまれ、有料でカンニングさせる。ピアノの運指でマークシートの記号を伝える独創的な方法をあみ出したことで、リンも調子づく。

もう一人の奨学生の男子バンクに見やぶられ、告発されたことで、リンは奨学生の資格もシンガポールの大学留学の推薦も失う。父からの叱責がつらい。

だが、高3になって、グレースとパットから、アメリカの大学入試の国際統一試験STICで助けてほしいとすがりつかれ、またしても独創的なカンニングの方法を思いついてしまった。こんどはバンクもひきこみ、“お客”も多い大作戦だ……。

リン役のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンがすばらしく魅力的で、見る者の感情をひきこむ。彼女の、複雑な感情にゆれうごくすがたが、あるいはカンニングのサスペンス以上の見ものかも知れない。2時間10分。

★★★★

(映画評論家 宇田川幸洋)

[日本経済新聞夕刊2018年9月21日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

エンタメ! 新着記事

ALL CHANNEL