引き出し1つや食器棚1段 少しずつ片付けを日常に
生活コラムニスト ももせいづみ
時短家事と言うと、「掃除、洗濯、料理」の項目別になりがちだが、「片付け」も立派な家事のひとつ。とはいえ、片付けは他の家事に比べてスキルアップが難しく、その道のプロのアイデアを本やネットで見聞きしても、すぐには片付け上手にはなれない。また、散らかす家族がいると思うようにならず、ストレスがたまる。悩ましい。
部屋が散らかるのは、ほぼこの3つが原因だ。
(1)空間とスキル以上に物が多い
(2)住所が決まっていない物がある
(3)元の場所に戻さない人がいる
つまり、物を極力減らし、効率よく所定の場所となる住所を決めて、使ったら元に戻せば部屋は散らからない。でもそれができれば苦労しないのだ!
以前脳科学の先生に伺った話では、片付け能力は万人にあるのだそうだ。ただ人の脳は一度にさほど多くの情報を処理できないので、量と空間に限りがある。畳1枚分程度なら誰でもできるけれど、部屋や家単位で大量の収納を考え片付けるのは、とても複雑で負荷の多い脳の仕事なのだとか。
「逆にいえば、それができるのは一部の特殊能力を持つ人。絵がうまい、計算が速いのと同じで、みんなができて当たり前ではない。物が多い今の家を片付けられないのは、ごく普通のことなんですよ」
忙しくて家族がいれば、家は散らかる。それを美しく片付けられる特別な人と比べたら、落ち込んでしまう。できなくて当たり前! と考えて、無理なくできる量だけ、小さく取り組んでいくのがいいんじゃないかと思う。
コツは「小さい場所」を「短い決まった時間」で、日常に組み込むこと。例えば……。
・朝食前にテーブルの上を3分だけ片付けて拭く。
・土曜の朝に冷蔵庫の一区画をお気に入りの曲をかけて整理する。
欲張らず、続けられそうな量だけ。そして、終わったら片付いたその場所だけを見て、よくできた、と自分を褒めてあげよう。
家族がいる人におすすめなのが「寝る前に居間に出した自分のものを片付けよう」という寝る前ルール。大事なのは「全員が一緒にやる」「音楽が鳴っている間で終わらせる」こと。好きな曲を閉店の音楽として流しながら、それぞれが自分のものを片付ける「閉店片付けタイム」を日々の日課に。朝起きたときに、居間が片付いていれば気持ちがいい。そんな前向きな気分も家族で共有してみよう。
気分良くできたら、折を見て引き出し1つだけ、食器棚1段だけ、と小さく取り組む。一度その中にあるものを全部出して、不用品を捨てて減らし、仕分けしながら元に戻す。この繰り返し。
片付けられないのは普通だったんだ! って思えると、なんだかほっこり安心する。小さい場所を短く、日々の習慣にしてみては。
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)、「やれば得する!ビジネス発想家事」(六耀社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2018年9月18日付]
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