映画『響 -HIBIKI-』 天才少女の痛快な叛逆
「ビッグコミックスペリオール」で連載中の柳本光晴のまんが「響~小説家になる方法~」は、すぐにつづきが読みたくなる、おもしろくてたまらないまんがだ。それは、主人公である高校生の少女、響(ひびき)のつぎに何をしでかすかわからないキャラクターと、そこから発生する緊張感によるものだろう。
それを、映画「響―HIBIKI―」は、みごとに映画として消化し、自分のものとしている。
成功の最大の要因は、響を平手友梨奈が演じたことだが、それを詳説するまえに響を紹介しなくてはならないだろう。
15歳。高校にはいって部活動は文芸部をえらぶ。部室を休憩所代わりに占拠する不良男子に入部をことわられるが、そいつの指をへし折って、入部。小説が大好きな、実は天才少女。文芸誌の新人賞に応募した原稿が、編集者、花井(北川景子)を感動させ、受賞。掲載されたその新人賞作品は、芥川賞、直木賞の両方の候補となる……。
その間、新人賞を同時受賞した田中(柳楽優弥)を授賞式中にパイプ椅子でボコボコにする。ベテランの芥川賞作家(北村有起哉)に痛烈な批判を浴びせ、蹴りとばす。取材記者(野間口徹)のカメラを破壊、とび蹴りをくらわす等々、突発的な暴力を炸裂(さくれつ)させる。
響の苗字、鮎喰(あくい)は、目で読んでいたときは気づかなかったのだが、耳で聞くと「悪意」と気づく。他者の悪意が敏感に響き、反射的に行動に出るのが響なのだ。
叛逆(はんぎゃく)的イメージの歌とダンスが特徴的なグループ、欅坂46を牽引(けんいん)する平手友梨奈は、鋭い眼光、電光石火のあざやかなアクションとまさに響その人。少女らしいかわいさものこす、痛快な叛逆ヒーローの誕生だ。
監督は「君の膵臓をたべたい」(2017年)、「センセイ君主」の月川翔。1時間46分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2018年9月14日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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