Men's Fashion

木型師がつくるハイヒール 履き心地へのこだわり追求

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2018.9.7

婦人靴の神戸レザークロス(神戸市)が手がけるオーダーハイヒールブランド「gauge(ゲージ)」が人気だ。人の足をかたどった木型を製作する職人「木型師」らが立ち上げたブランドで、個人の足の形に最も合う木型からハイヒールをつくる。履き心地にこだわりを持つ消費者から支持を集めている。

■360種の木型から顧客の足に合うものを探す

「木型師はメーカーの要望に合わせて木型をつくる受け身の仕事。木型師側から発信するような新しいブランドを立ち上げたかった」と、ゲージの発起人であるブランドディレクター兼木型師の五十石紀子氏は説明する。「木型師から見た見た目の良さと履き心地を両立したハイヒールを届けたいと考えた」

ゲージは店舗を持たず、神戸と東京のオフィスや期間限定ショップでハイヒールのオーダーを受注する。注文時はまず3次元(3D)計測器で顧客の足を測定し、360種類の木型から合いそうなものを絞り込む。木型は同じ23センチでも、幅やカーブの丸みが微妙に異なる12種がある。

ある程度合う木型の候補が絞り込めれば、その木型でつくったサンプルのハイヒールで履き心地を確認する。計測会場には常時360足のハイヒールが用意される。

■最終的には実際の履き心地を重視

3D計測器を使えばサイズの候補は見つかるが、「どんなにテクノロジーが進化してもハイヒールは履いて試すのが大事。同じ足のサイズでも皮膚の強さや厚さでフィット感もまったく異なる」と五十石氏。ゲージでは実際に履いた履き心地を最も重要視する。オーダーハイヒールを手がけるブランドは複数あるが、「360種類の木型を用意できるのは他社にない強み」(五十石氏)だという。

360種類の木型から最適なものを選べる

木型が決まったあとは、アッパーの生地やヒールなどのパーツを選ぶ。サイズも含めると組み合わせは約400万通りになる。左右の足のサイズが異なる靴をつくる人も多いという。

注文後は、木型と選んだ生地やパーツが浅草の提携工場に送られハイヒールがつくられる。納期は2~3カ月。税別3万5000円からだが、2017年春に伊勢丹新宿本店と三越銀座店に設けた期間限定店では、それぞれ2週間で100足ずつを売った。リピーターも増え、7足注文した客もいるという。

一人ずつ、それも両足とも異なるデザインでハイヒールをつくるため、生産効率は決して高くないが、実店舗を持たず直販と期間限定店に徹し、広告も交流サイト(SNS)や電子メールを中心にしてコストを削減することで利益を出せているという。

現在は受注場所が関西と東京が中心だが、今後は全国各地でも販売できるよう体制を整えたい考えだ。

(鈴木慶太)

▼神戸レザークロスの木型師らが発起人となり2016年3月に立ち上げたオーダーハイヒールブランド。3次元計測器で足型を測定し、360種類の木型から一人ひとりに最適なものを選んでハイヒールをつくる。「見た目の美しさ」と「足に無理をさせない形」を両立させるブランドを目指している。