口の中の石こう模型を3Dスキャナーに読み込ませる。その画像データをAIが学習。適切な大きさと形状の差し歯をデザインする。

歯科技工士が集めた症例を約1万件程度、AIに学習させている段階で、実験を始めた17年5月と比べ設計の完成度は高まっているという。19年からの実用化を予定する。

現在は歯科技工士がCAD(コンピューターによる設計)で入れ歯を設計している。1本の歯の設計に10分かかっているが、AIを使えば20秒で可能になるという。AIに代替させれば技工士しかできない陶材を使った特殊な入れ歯の作製や、人の目を使った確認に時間を使えるようになる。

3Dプリンターを使い矯正用マウスピースを製作するアソインターナショナル

藤城矯正歯科(東京・世田谷)では18年4月にCADデータから作った矯正用マウスピースを取り入れた。製作受託するアソインターナショナル(東京・中央)は3Dプリンターを使い、一度に30人分のマウスピースを量産できるという。歯科医師への技工物の納期は3週間から10日に短縮できるまでになった。

矯正器具は金属製が多いが治療が幅広い世代に広がるなか、手軽に量産できる透明なマウスピースの需要は高まっている。仕事の都合で半年前からマウスピース型の治療に切り替えた滝沢なつきさん(27)は、「歯が押さえつけられる不快感がなく、食べ物が器具につまる心配もない」と目を細める。

歯の治療はおっくうで物おじしてしまう面もあるが、最新技術で負担が減れば前向きに自分の歯とも向き合えそうだ。

◇  ◇  ◇

保険適用広がる 樹脂製「ブリッジ」など

スキャナーやAIを使った治療の他にも、2018年度の診療報酬改定を受け新たに保険適用となったものがある。その一つが樹脂製の「レジンブリッジ」と呼ばれる詰め物だ。抜けてしまった歯の隙間の両隣の歯を支えにして橋をかけるように器具を配置、かむ機能を復活させる。金属アレルギーがあることなどが保険の適用条件だ。

矯正の分野でも、新たに保険内となる治療法が2つある。1つ目はうまく生えずに埋まってしまった永久歯を引っ張り、かみ合わせを整える治療だ。

2つ目は下の歯が上の歯よりも前に出ており、あごが突き出て見える受け口を治療する技術。「スライディングプレート」と呼ばれる装置は受け口患者の下顎を後方に下げやすくし、かみあわせを正常にする。患者の選択肢は広がっている。

(松冨千紘)

[日本経済新聞夕刊2018年9月5日付]