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囲碁・将棋・オセロ… 盤面ずらり、同時に勝負

2018/9/3付 日本経済新聞 夕刊

1対1で7種の盤上ゲームを争う(7月、都内で開かれた「桑名七盤勝負」の大会)

囲碁、将棋、オセロなど複数のゲームを同時に戦う競技を楽しむ人が増えている。複数作業を同時にこなす「マルチタスク」が進む現代にマッチしたゲームとして広まっているようだ。

「バックギャモンは覚えたてなので仕方ない。得意な将棋で負けたのが痛かった」。7月下旬、東京・板橋駅前のビルの一室で開かれた「桑名七盤勝負」の第1回東京グランド大会。真剣な表情をした選手たちは7種類の盤上ゲームが並べられた長机の横を、せわしなく行ったり来たりしながら戦っていた。

■「七盤勝負」の大会

ゲームは「将棋」や「チェス」、通常は19路だが9路の盤を使う「囲碁」、「オセロ」、「連珠(五目並べ)」、サイコロも使う「バックギャモン」、将棋から派生した「どうぶつしょうぎ」の7種類。いずれも盤上ゲームなので「七盤勝負」と呼ばれる。全ゲームを同時に始め、机の端から順番に一手ずつ進め終えると手番が交代する。一方が4勝すれば決着がつく。

持ち時間は45分ずつなので長そうに思えるが、単純計算すると1種目あたり約6分半で、長く考える余裕はない。対局中、ひとつひとつのゲームで立てた戦略を覚えておくのも大変だ。7種類のルールをきちんと把握するだけでも簡単ではない。対局者が互いにルールを教え合うこともよくあるという。

七盤勝負の考案者である三重県桑名市の囲碁将棋サロン庵(いおり)の大川英輝代表は「たまたまサロンを訪れたお客さんの好きなゲームを集めると七盤勝負になった。対戦すると、頭脳の色々な部分を使うような感覚になる。仕事でも複数を同時にこなすマルチタスク化が進む現代に向いているのかもしれない」と笑う。

交流サイト(SNS)やツイッターで対局写真が壮観だと注目を集めた。昨年2月に桑名で初めて大会が開かれ、東京、福岡、高松、大阪など各地で開催されてきた。

どうぶつしょうぎをデザインした将棋の元女流棋士で七盤勝負を応援する藤田麻衣子氏は「ほかのゲームの愛好家と交流できるのが楽しい」と言う。連珠棋士で国内トップ級の岡部寛九段も「連珠というゲームを知ってもらうきっかけになる」と歓迎する。

■アプリで大人数

3種目をアプリで競う大会も(昨年のトライボーディアン日本選手権)

ただ桑名七盤勝負は盤の調達や並べる場所の確保に手間がかかり、参加者を増やしにくい。7月の東京大会も16人限定だった。一方で囲碁、将棋、オセロの3種目に絞り、タブレット端末やスマートフォンの無料アプリを活用することで大人数が楽しめるようにしたのが、2015年に始まった「トライボーディアン日本選手権」だ。

テーブルで向かい合った対戦相手と「囲碁クエスト」「将棋クエスト」「オセロクエスト(旧リバーシ大戦)」の3つのアプリで順番に決着を付ける。水泳、自転車、ランニングに挑戦するトライアスロンのボードゲーム版ともいえる。

昨年の第3回大会は100人を超す参加者が集まった。アマチュア強豪だけでなく、囲碁や将棋のプロ棋士らも交え、ハイレベルな戦いが繰り広げられた。

主催するマイナビ出版の将棋書籍編集長で、トライボーディアン協会理事の島田修二氏は「3つのうち、ひとつでも勝てるとうれしい。対局を振り返る感想戦で教え合うこともできる。和気あいあいとした雰囲気で仲良くなり、参加者にはリピーターが多い」と話す。

協会は段級位認定を始めた。各地の愛好家が運営する地域大会も始まり裾野は広がる。10月に開く第4回大会では名人戦、一般、初級の3クラスに分け、初心者も参加しやすくする。

プロのプレーヤーが他流試合を楽しむ例は少なくない。将棋の第一人者、羽生善治竜王はチェスの国内トッププレーヤー。将棋の永世名人の資格を持つ森内俊之九段や囲碁のタイトル経験者、武宮正樹九段はバックギャモンの強豪として知られる。

アマチュアはあるゲームに絞って腕を磨くのが一般的だった。だが「先を読む力」が勝負のカギとなる点は盤上ゲームに共通する。今後、クロスオーバーで盤上ゲームを楽しむ動きが広がりそうだ。

(山川公生)

[日本経済新聞夕刊2018年9月3日付]

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