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マルハニチロの平林桂子さん

マルハニチロの平林桂子さん

業務用の冷凍介護食市場でシェアトップのマルハニチロ。今でこそ、数多くのメニューを取りそろえるが、平林桂子さん(50)が最初に取り組んだ2004年当時は、市場を一から開拓しなければならなかった。病院や介護施設などから大型受注を獲得するようになった今、平林さんは多くの高齢者に食べる喜びを届けている。

7月某日。平林さんは新潟県の病院で60人の管理栄養士を前に約1時間、講演した。ミキサーにかけると水分が多くなり、栄養素が落ちてしまう介護食をどう改善できるかという内容だ。朝5時から厨房に入り、高齢者が食べやすいメニューや調理方法を実演。多い時には月に2、3回、講演で全国を飛び回る。

平林さんは15年に介護食営業の専門チーム「メディケア」のリーダーとなり、現在は4人の営業部員を束ねる。取引先は病院や介護施設、給食会社や業務用の卸企業など多岐にわたる。そのため、商談では相手の年齢や経験レベル、取引先企業の業界内での立ち位置や企業姿勢などに合わせた提案を心がけている。資料も商談中に想定されるやりとりの数手先を想定して、入念に準備する。

マルハニチロは業務用の冷凍介護食市場でシェアトップを誇る。見た目も通常の食材と変わらない目玉焼きや果物の形をしたゼリーなど多種多彩なメニューをそろえる。かむ力が衰えた要介護者でも舌でつぶせる柔らかさで食べやすい。要介護者は食べ物や異物が気道や気管支に入ってしまうと、微生物が肺の中に入り、誤嚥(ごえん)性肺炎などを発症するリスクが高まる。食材選びや調理・加工には細心の注意が必要だ。

平林さんが介護食の企画・開発に取り組み始めたのは、給食会社を担当していた04年ころ。「形や色、風味がある介護食を作れないか」と依頼されたのがきっかけだった。当時の介護食はきんぴらごぼうをどろどろにするなど、出来上がった料理を柔らかくしたものがほとんど。介護施設や病院の厨房で管理栄養士がミキサーでつぶしており、現場の負担も大きかった。

「鳥肌が立つほどモチベーションが上がった」平林さんは、さっそく社内に持ち帰って商品化を画策したものの、マーケットがない分野だけにハードルは高かった。当時の上司と2人で、魚をミキサーにかけて試作品をつくった。全国の病院や介護施設を回って管理栄養士や調理師の声を聞いた。和歌山県を除く46都道府県を訪ね、月の半分以上が出張だった時期もある。

この行動力こそ、平林さんの信条でもある。電話で話して少しでも手応えがあれば直接会いに行く。新しいカタログを送る際も手書きの手紙を添えるなど、細やかな心配りも忘れない。場数を踏んだことで、仕事の幅が広がり商談にも自信を持って臨めるようになったと振り返る。

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