考え無用、家事はルーティン化しよう カジダンへの道
モバイルファクトリー社長、宮嶌裕二氏
家事のルーティン化にこだわっています。食事の準備や掃除、洗濯など、家事は細切れ時間の積み重ねが結構、ばかにならない。何からどう着手するかを考えることに時間を割きたくないからです。
風呂は最後に入った人が浴槽を洗って出る、寝る前に乾燥機一体型の洗濯機を回しておく……。かなりの部分を習慣化しています。子どもたちの朝食は私がつくりますが、メニューは「毎朝パン」と決めています。何を出すかあれこれ考えずに済み、慣れているので調理時間もかからない。
毎日、同じものだと、子どもの食欲や体調の微妙な変化がわかるようになります。食パン1枚だったのが2枚目に挑戦するようになれば、成長を実感します。
もちろん、健康面は気遣っています。全粒粉パンやライ麦パンなどのブラウンブレッドをチョイスしたり、パンに塗るスプレッドをブルーベリーにしたりチョコレートにしたりなど飽きさせない。
家事ルーティン化は、会社経営からの気づきの転用です。とにかく、「決定疲れ」したくない。
あれこれの日常業務の意思決定は、社員に任すことで減らしました。その分、答えがない状況で未来をつくり出す事業の方針決定など、ビジネスの根幹にかかわる時間に集中できます。家庭では、家族とのコミュニケーションの時間を充実させることができる。朝、食事をてきぱき済ませ、子どもと遊ぶ時間を確保しています。
ルーティン化のもう一つの効用は家事の分担をしやすくなることです。家事を習慣化してしまえば、「自分の役割」といった変なこだわりや思い込みが発生しません。掃除、洗濯といった個々の家事も、ルーティン(1)、ルーティン(2)と単にナンバリングした作業の一つになり、互換性も生まれます。
そのおかげか、普段は妻がつくる夕食を、最近は自分もつくるようになりました。夕方、急に彼女が子どもを病院に連れていくことになった際は、「俺がつくっておくよ」と自然に口に出ます。
ただ、家事のルーティン化には落とし穴もあります。いつもと違うスケジュールが入り生活のペースが崩れると、パニックに陥りやすくなる。
私は今、平日午後6時の帰宅を実現しています。暮らしのペースを保つため、夜の会合・会食には出ないという決断をしました。当初は、インターネット業界の最新事情から置いていかれる、誰も誘ってくれなくなるのではないか、などの不安がありました。
「やめる勇気」を得られたのは、自分にとって何が一番大切かを考え、「家族と事業」であるとしっかり認識できたからです。
実際は、夜にあった会合・会食も、日中の時間を使ってできないことではありません。家事の時短に向き合って得た気づきです。
東京都出身、47歳。1995年大学卒業後、ソフトバンク入社。サイバーエージェントを経て2001年にモバイルファクトリー設立。育休を2回取得。5歳、3歳、0歳の3児の父。
[日本経済新聞夕刊2018年8月28日付]
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