台湾で研さん積んだ「野武士」 対立の仲裁で信頼獲得
IHI社長 満岡次郎氏(下)
台湾の火力発電所を担当した
1996年、航空エンジン部門からガスタービン部門に転属した。
火力発電所のガスタービンは航空機用のジェットエンジンと基本構造は同じです。ただ、プロジェクト全体の遂行を任せられたので、エンジンの設計にとどまらず、発電所の建物や土木、電気工事まで全てを管理することになりました。
12月、1週間分の荷物をスーツケースに入れて台湾に旅立ちました。まさか1年半も台湾暮らしが続くとは思いもしませんでした。当社が担当していたプラントの設計が遅れていたため、私は完工までとどまることになったのです。
台湾・新竹市の火力発電所を担当した。
新竹は急成長する台湾の半導体産業の中心都市です。半導体は「時間をお金で買う」というほど変化の激しいビジネスで、半導体工場に電力を供給するための発電所建設は一刻の遅れも許されません。
大規模プロジェクトに設計変更は付き物で、その時も変更がありました。ただ、時期が12月だったため、設計変更した図面を31日中に納めないと、正月を日本で迎えられません。現地の設計会社は大みそかの朝になってもまだ図面をチェックしています。
内心焦りながらも午後2時ごろにチェックが終わり、顧客側の責任者に図面を手渡しました。私が「5時の便で帰る」と言うと、相手方も気にしてくれて「早く行きなさい」と。4日後にまた台湾に戻ったのですが、これが信頼関係の第一歩になりました。