映画『妻の愛、娘の時』 中国・女性3世代の生き方
中国と台湾の合作で、舞台は中国(ロケ地は主に鄭州)。監督・共同脚本・主演のシルヴィア・チャン(張艾嘉)は、「海辺の一日」(1983年)、「上海ブルース」(84年)、今秋劇場初公開となるキン・フー(胡金銓)監督の「山中傳奇」(79年)等、台湾・香港で活躍する女優として有名だが、監督としてもベテラン。これが長篇12作目だ。
中国の3世代の女性の生きかたを、ひとつのドラマのなかに巧みにからみあわせている。
フイイン(シルヴィア・チャン)の母の臨終からはじまる。最期に何か言ったというより口をうごかしたのを、亡き夫と同じ墓に入れてほしい、ということだと解釈したフイイン。思いこみがつよく、思いのとおりになるよう、つっ走るところがある。それで、まだ同居しているむすめのウェイウェイとよくもめる。夫シアオピンは、1歩ひいて見まもっていてくれるが。
20年以上まえに他界した父は、生まれた農村に墓がある。その遺骨を掘りおこして、いま住む都会に母といっしょの墓を、とフイインは計画する。
だが、村には、父が村を出るまえに半年間、結婚していた妻が、90歳でまだ生きていて墓を守っている。彼女は彼女なりに、夫への愛がある。
フイインがおこした墓の移設問題はもめにもめ、ウェイウェイのつとめるテレビ局が取材したため、ますます大変なことに……。
コメディー・タッチもまじえた展開のなかで、父の最初の妻の生きてきた歴史への、また、家を出て恋人との歴史をつくりはじめたむすめへの理解の必要に、フイインはぶちあたる。
ひかえめな夫役を、「盗馬賊」(85年)、「青い凧」(93年)等の〈中国映画第5世代〉の雄、ティエン・チュアンチュアン(田壮壮)が演じ、すばらしい"夫の愛"を表現している。2時間1分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2018年8月24日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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