味も形も変化自在 グミ、食感+健康志向で人気一段と
菓子売り場で勢力を広げるグミ。形も色も味も変幻自在で、独特の食感にやみつきになった人も多いのでは。新たなフレーバーが続々と生まれ、ファンが増え続けている。人気の理由を探ってみた。
「オフィスに常備している」(28歳の男性会社員)、「新作が出たら必ず買う。コンビニ限定と聞いたら店をハシゴする」(23歳の女性会社員)。若い世代を中心に、グミが人気だ。コンビニではガムを押しのけ、レジ前に並べる店舗も。アジアからの観光客がドラッグストアで大量に購入する姿も珍しくない。
なぜ思わずグミに手をのばしてしまうのだろう。「欧米のグミよりやわらかいし、見た目もかわいい」と話すのは、中国から来た女性(27)。「日本グミ協会」を設立し、会長として活動する武者慶佑さんも「まずはかむこと自体の快感。かわいらしくて形や色や味が様々なグミは写真映えもする。ソーシャルメディアで発信する最近の流れに合っている」と話す。
メーカーにも聞いてみた。カンロの河野亜紀さんは「コラーゲン含有など機能性をうたう商品が増えてきた。小腹がすいたときもグミなら罪悪感をそれほど感じず口にできる」と分析する。
日本でのグミ登場時に子供だった世代も今や40~50歳代で、食べ慣れた大人が増えた。生まれたときから親しんできた「グミネーティブ」も多い。さらには健康志向の人が手に取りやすいイメージ戦略。独特の歯応えで満足感もある。様々な要素が相まって人気が定着してきたようだ。
ところで、そもそもグミとは何なのか。基本的には砂糖や水あめに果汁やゼラチンなどを加え、固めてつくる。発祥は1920年代のドイツとされる。「ゴールドベア」で知られるハリボー社が子供にしっかりとかむ力をつけさせようと開発したという。
日本で初めてのグミ製品は明治製菓(当時)が80年に発売した「コーラアップ」。明治といえばチョコレートが有名だが、夏にも強い商品をつくりたいと、欧州視察で人気のグミに目をつけた。子供を意識してやわらかく仕上げており、オブラートごと食べるのを懐かしく思い起こすファンもいるはず。当時とは違うが、硬めに生まれ変わった商品は今もある。
グミ人気に火が付いたきっかけは同じく明治製菓が88年に出した「果汁グミ」。濃縮還元の果汁100%をうたい、若者世代に支持された。90年代以降は他のメーカーが続々と本格参入。すっぱいパウダーをまぶしたカンロの「ピュレグミ」、春日井製菓の「つぶグミ」、カバヤ食品の「タフグミ」、UHA味覚糖の「さけるグミ」など様々なタイプが登場した。
新たな動きも出てきた。「9月3日はグミの日。これからグミで原宿をジャックします」。グミ協会はメーカーと組んでイベント「グミット」を展開中だ。東京・原宿の竹下通りに横断幕や旗を掲げ、限定グミの発売や食べ放題パーティー、SNS(交流サイト)を通じた画像投稿キャンペーン、テーマソングづくりなどで盛り上げる。
「地元の農産物をグミにしたい」「栄養補完のグミサプリを海外に売りたい」。菓子のOEM(相手先ブランドによる生産)を手掛ける日進乳業(愛知県北名古屋市)が17年に設立した「グミ研究所」には、「月に20件程度の相談がある」(担当の犬飼保史さん)。同社は人気アイドルの唇をグミで再現したこともあり、一定量以上であれば受託生産に応じている。
成長続くグミ市場。明治の船山慶さんは「他の菓子に比べれば歴史が浅く、調査ではグミを買った経験がある人はまだ4割程度。チョコの9割と比べると拡大の余地は大きい」と分析する。変幻自在のグミ。その勢いはとどまるところをしらない。
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市場規模拡大、ガムを猛追
富士経済によるとグミの2017年の出荷額は433億円と前年比15%増。「かんだ後に捨てずにすむ」とガム代わりに買う人が多いようだ。ガム市場は縮小し、17年は823億円と5年前から約2割減。グミがガムを猛追し、追い抜かんばかりの勢いだ。
メーカーは増産に動く。明治は17年に東海工場(静岡県藤枝市)で20億円をかけてラインを増強した。訪れるとちょうど果汁グミの温州みかん味を製造中。配合やほぼ自動化した工程は長年の研究のたまもの。6月にはバーチャル見学コース「果汁グミの研究所」も新設した。ファン注目のスポットだ。
(河野俊)
[NIKKEIプラス1 2018年8月25日付]
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