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スムージーにつけ麺… 奈良に広がる大和当帰葉グルメ

2018/8/23付 日本経済新聞 夕刊

「ドリンクドランク」ではスイーツとして当帰葉を味わえる(奈良市)

セリ科の薬草、ヤマトトウキ(大和当帰)の葉を取り入れたメニューを提供する飲食店が奈良県で増えている。食べ方は薬膳からスイーツまで様々で、最近、生葉も市販されるようになった。美容や健康に効果が高いとされることから、女性を中心に人気が高まりそうだ。

「P.O.F.」の店内には大和当帰のイラストが描かれている。手前は「血のプレート」(奈良市)

奈良市のカフェ「P.O.F.」では、ほとんどのメニューに当帰葉が使われている。パクチーやセロリに似た独特の香りがあり、トマトのスープなど酸味のある料理に刻んで入れたり、肉団子に混ぜ込んだりする。生葉には少し苦みがあるが、料理のアクセントにうってつけだ。

オーナーの吉田奈麻さん(44)が当帰葉を扱うのは今年で3年目。夫が肝硬変で急逝したことから普段の食事の大切さに改めて気付き、2015年に薬膳カフェを開いた。

メインやスープに当帰葉を使った「血のプレート」は、体を温める効果がある。冷え性や婦人科系のトラブルに効果が見られるといい、吉田さんは「状況が改善したというお客さんに何度も出会い、食材としての魅力に取りつかれた」と話す。店頭ではふりかけや調味料などの加工品も販売している。

「今年は猛暑で葉も少し元気がない」と話す益田吉仁さん(奈良県五條市の益田農園)

生の当帰葉が本格的に食用として出回るようになったのは昨年から。春から秋にかけて県内の一部のスーパーなどでパック詰めで市販されている。奈良県五條市の益田農園では20アールに約7千株を栽培。「経験上、全体の1割程度の葉なら摘み取っても根の成長に影響はない」(益田吉仁代表)といい、若い黄緑色の葉を年に4回ほど手作業で摘み取る。根は冬に掘り上げて生薬として出荷する。

県内では、ほかにも高取町や宇陀市などで栽培されている。奈良公園の猿沢池近くのスムージー専門店「ドリンクドランク」(奈良市)は高取町産の葉のパウダーを使用。「大和トウキ葉とバナナのスムージー」はバナナやミルクなどと小さじ1杯のパウダーをブレンダーで混ぜ、パウダーとアーモンドをトッピングする。バナナの甘さに爽やかな味わいが加わり、スイーツとして違和感はない。

生駒市の人気ラーメン店「トリカヂイッパイ」では、当帰葉パウダーを練り込んだ自家製麺のつけ麺「セリカ」が味わえる。

まず昆布水に漬けた緑色の麺のみをすする。追って付け汁が出される。「香りを楽しんでもらいたい」と、店の名前に合わせて「船長」の肩書を持つ中村雅彦さん(50)。「当帰は面白い食材で、セリカは工夫を重ねた自信作」。夜営業でのみ提供し、月曜から30~40食分を用意するが、翌日には売り切れることが多いという。

<マメ知識>栄養豊富 スーパーフード
大和当帰は乾燥させた根が漢方薬の原料となる。江戸期に日本各地で栽培され、現在の奈良県五條市周辺の「大深当帰」が最高級品とされたが、近年は生産量が激減。県は2015年から協議会を設けて商品開発や販路開拓の後押しをしている。葉はあまり食べられてこなかったが、12年に厚生労働省が「非医」扱いとしたことで、野菜としての流通が始まった。生産者や販売業者らが設立した「大和ハーブ協会」(奈良県生駒市)によると、ビタミンEなどが豊富な「スーパーフード」だという。

(奈良支局長 岡田直子)

[日本経済新聞夕刊2018年8月23日付]

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