家庭のごはん 実はフルコース式がラクだった
生活コラムニスト ももせいづみ
食事の支度は毎日のことなので、負担感も大きい。特に子どもを含む家族への食事づくりは、かなりのエネルギーが必要だったなあと思う。
日本の食卓は一汁三菜が基本と刷り込まれてきたので、おかずのほかに小鉢やサラダなど複数の皿数を用意して、全部整ったところで「ごはんですよ」と家族を呼ぶ。足りない調味料を運んだりしているうちに、「ごちそうさま」と皆の食事は終わってしまい、あとは洗い物が残る……、というような。
週末の作りおきや、調理家電を駆使して時短料理の工夫などを重ねてみたことがある。それでも、海外の友人家庭での食事スタイルを見聞きしてから、一気に楽になったように思う。
ワンプレートで十分というアメリカ、前菜からゆっくり作りながら食べるフランス、外食が基本の台湾や香港。「食はこうあるべきだ」と自分を縛っていたものがゆるく解けて、負担感が減った。
一番ラクだなあと実感したのが、フランス式フルコース式ごはん。メインの料理はオーブンやタイマー付きのガス台や電気鍋にセット。簡単なものをオードブルのように出して、「煮えたかな?」「焼けたかな?」と会話しながら、メインができあがるのを待つ。できたら、盛り付けのために腰を上げるのは夫や子ども。
待ちきれない、足りないという声が出たら、作りおきの総菜や、冷蔵庫の中を一緒に探して、相談しながら追加。ちくわにマヨネーズ、まるごときゅうりなど、そんな作業も意外と楽しかった。実際、フランスでの夕食もこんな感じでとてもシンプルだ。
一番の効用は、子どもが苦手な食材も食べるようになったこと。主菜と並ぶと残されがちだった副菜類も、最初に1品だけ出されると空腹に負けて食べてしまう。食にまつわる会話も増えたし、料理への当事者意識が家族に芽生え出したのもよかったなあと思う。
「食卓の整え方やマナーを知る機会がなくなる」という人もいるけれど、それは「ハレの日」として意図的に取り組む日があればいいようにも思う。
「食べながら作っちゃえ」のフルコース式にオススメなのが、ボタンひとつで煮物や焼き物まで幅広く対応してくれるオーブンレンジ。肉や魚などと一緒に野菜も天板に乗せて調理し、できたらそのまま食卓に出してしまえば、副菜の準備もいらないのでとても楽。
電気鍋や電気の圧力鍋、火からおろした状態でほっとく調理ができる保温鍋などもいい。鍋のまま食卓に運んで、みんなで「できたよ!」と蓋を開け、味付けや最後の仕上げも食卓で一緒にできれば、食育にもなって楽しい。
ワンプレートの日、外食の日、楽ちんフルコース出しの日。いろいろ取り混ぜて、少しでも負担が減るといいなと思います。
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)、「やれば得する!ビジネス発想家事」(六耀社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2018年8月21日付]
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