不妊治療、ひとりで悩まないで 自治体が相談窓口整備肉体的つらさ・仕事との両立・金銭負担…、悩みは多岐に

府の不妊専門相談センターでは助産師が電話で相談にのっている。寄せられる悩みをもとに「2人目不妊のこと」、「治療中の妻のサポート」などテーマを作り患者同士の相談会も企画する。相談会で最も人が集まるのは「子どものいない人生を考える」だという。

つらい不妊治療を経験しているという共通項がある人同士だと理解を得やすく、悩みを打ち明けやすい。ここで心を開くことが訓練になり、職場や周囲に説明しやすくなるという。

東北大大学院の吉沢豊予子教授(ウィメンズヘルス看護学)は、不妊治療を受けていることを公にしやすい環境づくりが必要だという。特に職場では不妊治療をしていることが仕事の妨げととられかねないと口を閉ざす人が少なくない。ただ「治療には周囲のサポートが不可欠。社員が安心して働けるように企業は配慮しなくてはならない」と説明する。

◇  ◇  ◇

「両立できず仕事辞める」16% 支援制度ある企業少なく

不妊治療の負担は大きく、仕事との両立は大変だ。厚生労働省の調査によると、治療している人の16%が両立できずに仕事を辞めている。仕事を続けている人も、通院回数の多さや精神的な負担感などで87%が困難だと感じている。

「会社に悩んでいる人がいる、身近な問題だという認識を持っている企業は少ない」。大阪府の職員はこう話す。府ではセミナーを通じ、社員が不妊治療のために休暇が取得できるような制度作りを企業に促している。

先行して独自制度を設けた企業もある。富士ゼロックスは2012年から最長で1年間、不妊治療のために休職できるようにした。育児用品販売のダッドウェイ(横浜市)は、不妊治療や養子縁組にかかる費用を最大年12万円、最長5年間補助する。「不妊治療を公表することは大きな負担」(同社)だ。上司への報告なしに補助の申請ができるようにしたという。

ただ、こうした企業はまだ少ない。厚労省の調査によると、支援制度を整えている企業は3割、不妊治療に特化した仕組みがある企業は9%にとどまる。

(渡部加奈子)

[日本経済新聞夕刊2018年8月8日付]

ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
注目記事
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント