映画『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
指令が届き、要件を述べたあと「当局は一切関知しないからそのつもりで」。
この薄情な指令がTVドラマシリーズ「スパイ大作戦」から、映画化6作目の本作までのCIA内部のスパイ組織IMFのお約束。
組織のリーダー、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントは仲間のルーサー(ヴィング・レイムス)、ベンジー(サイモン・ペッグ)と共に3個のプルトニウムを回収、複数の都市の同時核爆発テロを未然に防ぐ任務につく。手がかりは"ジョン・ラーク"という名前と、その人物が接触するはずの"ホワイト・ウィドウ"と呼ばれる女性。
監督・脚本・製作のクリストファー・マッカリーは前作『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の監督。シリーズ初の2度目の監督だ。アカデミー賞脚本賞受賞のサスペンス映画の傑作『ユージュアル・サスペクツ』の作家だけに、アクションが売りのシリーズに、驚きのアクションに負けない物語を組み込む工夫を見せる。
その工夫の一つがハントの妻ジュリア(ミシェル・モナハン)と、ハントが惹(ひ)かれている他組織のスパイ、イルサ(レベッカ・ファーガソン)との関係だ。
ハントに不信感を抱くCIA長官は部下の腕利きエージェント、ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)を送り込み、彼とハントが対立、そこから生まれる余波(フォールアウト)がハントを危地に追い込んでいく。
映画の中のトムは吹き替えなしで肉体酷使。高い建物へ飛び移る際の骨折事故のニュースは世界を駆けたが、成層圏に近いところからのダイビングや自ら免許を取得して挑戦したというヘリコプターによるチェース、断崖絶壁からの落下など、映画がただの見世物なら今回は最高傑作。TV時代からのお馴染(なじ)みのテーマ曲が流れれば血が沸きたち、世界は今日もまた安泰だ。2時間27分。
★★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2018年8月3日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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