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熱々を一口、あんは甘くさっぱり 北九州の鉄なべ餃子

2018/8/2付 日本経済新聞 夕刊

小ぶりの鉄なべに、一口サイズのギョーザが2列に並ぶのが基本形(池田屋の鉄板餃子黒崎店)

 ギョーザが名物の街は各地にあるが、北九州市八幡地区はなかなかの筋金入りだ。熱々のまま食べる「鉄なべ餃子(ぎょうざ)」発祥の地といわれ、製鉄所で働く労働者たちの胃袋を長年満たしてきた。今も様々なギョーザが人々のスタミナ源になっている。

カウンター上には熱々の鉄なべを置ける鉄製レーンがある(本店鉄なべ)

 JR黒崎駅にほど近い「本店鉄なべ」はU字型の黄色いカウンターに、熱い鉄なべをそのまま置ける黒い鉄製レーンが埋め込まれている。注文して5分前後で、直径18センチメートルの鉄鍋に一口サイズのギョーザが5個ずつ2列に並んで出てきた。ハフハフしながら口に含むと、あんはさっぱりした甘みがあり、柔らかくゴクリとのみこめそうな量だ。

 開業は1958年。製鉄マンが好んだ鉄なべ餃子を生んだ店と聞き、肉やニンニクの主張が強い味を想像していたら裏切られる。店長の久冨陽介さん(43)は「小粒でも鍋に敷き詰めず、手際よくパリッと焼き上げる」と話す。あんは多めのキャベツと国産の豚バラ肉に少々の牛モモ肉で食感を整える。汗を流して疲れた体に一口ギョーザとビールをテンポよく流し込むのが伝統的な食べ方だ。女性やシニア層の客も多く、1日1500個が売れるという。

 鉄なべ餃子は、創業者の宇久温子さんが中国人が営む料理店で食べたギョーザの人気に驚き、日本人の口に合うように仕上げた。熱々で食べてもらいたいと話していたら、兄が東京で食べた鉄板に載ったスパゲティを思い出し、京都から小鍋を取り寄せて完成した。

 本店鉄なべからしばらく行くと「池田屋の鉄板餃子」黒崎店にたどり着く。丸い鉄なべとあっさりした小粒のギョーザは共通している。卓上のラー油やニンニクでパンチを効かせてもいいし、揚げ餃子や水餃子、スープ餃子、皮やあんにカレー粉を練り込んだカレー餃子も楽しめる。オーナーの池田年穂さん(71)は「それぞれのギョーザに合った皮を作り、あんや皮は1日寝かせている」と話す。

手羽先にギョーザのあんを詰めた手羽ギョーザなどに「八幡ぎょうざ」は進化している(ママの餃子)

 地域グルメを育てようと有志で発足した八幡ぎょうざ協議会によると、八幡地区には鉄なべ系、皮の厚い中国本土系、豚骨スープで仕上げるラーメン系、手作り感たっぷりの家庭料理系の4通りの約60店がひしめく。

 家庭料理系の居酒屋「ママの餃子」は名前の通り、知人の評判に後押しされた藤本美加さん(54)の手作りギョーザが看板メニュー。羽根付きで具材もたっぷりだ。手羽先の骨を抜いて、あんを詰めた手羽餃子も人気という。

<マメ知識>ナスや竹炭 変わり種も
 ギョーザが各地に根付いたのは戦後、少ない材料でおかずや酒のつまみになる手軽さが大きかった。八幡地区でも製鉄マンが飲みに誘う常とう句として「ギョーザいくか」と声を掛け合っていたという。見た目や味が素朴な鉄なべ餃子はそうした時代の空気も感じさせてくれる。
 一方で、進化も止まらない。最近では、ナスや大根で包んだものや、竹炭を練り込んだ黒いギョーザなど変わり種が登場している。鉄なべをスタートに進化の道を巡ってみるのも味わい深い旅になるだろう。

(北九州支局長 山根清志)

[日本経済新聞夕刊2018年8月2日付]

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