女性社員30人と会社のムダ取り 嫌われ役買って出る
横浜ゴム社長 山石昌孝氏(下)
全社的なコスト削減プロジェクトを指揮した
2005年にコスト改善施策「MD(ムダ取り)プロジェクト」の担当になった。
当社の05年の売上高営業利益率は競合の住友ゴムの半分の水準でした。「業務のムダを徹底的に見直せ」という当時の南雲忠信社長の号令の下、同年11月からプロジェクトが動き出しました。
メンバーには本社や工場から選抜された30歳前後の一般職の女性社員30人が集められました。伝票処理を担当し、ムダな作業の在りかを一番分かっているはずだからです。
ただ、チームは大きなプロジェクトの経験がない社員ばかりです。「何をすればよいのか」と1回目の会議では不安の声であふれていました。「ムダだと思う部分は何でも取り除きます」と説得し、自由に話し合ってもらいました。
年間5億円ずつの削減効果を出す。
簡単なものでは、「行き来の多い本社―平塚の電車には回数券を使う」などの取り組みを実施しました。平塚製造所(神奈川県平塚市)の技術棟の入り口は夜間施錠され、清掃業者はエレベーターホールまでしか入れません。そこに気づいたメンバーが業者と交渉して、1500万円だった清掃費用を500万円に抑えた事例もありました。
コスト削減額で定量評価する方法がメンバーの動機付けになったのだと思います。年間5億円ずつコストが減っていきました。
07年にプロジェクトの担当室長に昇格しました。室長として嫌われ役を買って出ることが私の役割になりましたね。メンバーが提案した施策を実行しない役員や管理職のもとに出向き、「だからあなたの部門は赤字なんですね」とたんかをきって回りました。
厳格なコスト管理を強制したため、社内で反感を買いました。ただ、数年で住友ゴムと遜色ない水準の営業利益率となり、目に見える成果から社員も徐々に納得していきました。