思い立ったら「ひとりキャンプ」 バックパックでOK
最近、「ひとりキャンプ」がはやっていると聞いた。キャンプというと、皆でバーベキューを楽しむイメージ。1人でキャンプなんて寂しくないのか。魅力を探りに、記者(60)はキャンプ場に向かった。
7月上旬、快晴の平日。自宅から車で1時間半ほどで、埼玉県飯能市のキャンプ場「ケニーズ・ファミリー・ビレッジ」に到着した。
ログハウス内のフロントでチェックインを済ませ、車で一般サイトと呼ばれる区画に移動。1区画の広さは約75平方メートル。車を止めて、テントとタープを1張り設営できる。
車から荷物を下ろす。キャンプコーディネーターの佐久間亮介さん(28)によると、ひとりキャンプをするには、最低限必要なテントなど基本の道具がある(写真参照)。道具にはいろいろあるが、ざっと5万円ほどでそろえることができる。車がなくても、バックパックに基本道具を詰め込めば、ひとりキャンプを楽しめるという。
さっそく、タープとテントを設営。最初は結構、時間がかかるが「慣れれば5~10分でできる」と佐久間さん。次にテーブルとチェアの組み立て。日帰りの場合はテントは不要。「いずれも軽量でコンパクトなものがおすすめ」(佐久間さん)だ。
次に料理に取りかかる。まずは火起こし。炭はキャンプ場で販売しているものを使う。ちょっとした「たき火気分」が味わえる。持参したダッチオーブンに、キャンプ場に向かう途中のスーパーで調達した野菜とソーセージを入れ、炭火でローストする。
食事の用意や後片付けはすべて1人でやるので、手の込んだ料理は避けよう。アウトドアだと「カップラーメンでも十分おいしく感じる」と佐久間さん。実際、塩とコショウだけの簡単料理でも、うまみは格別だ。
腹ごしらえをして、チェアに腰を下ろす。ここは標高200メートルくらいか。川のせせらぎ、鳥の声、森を吹き抜ける風。開放感がたまらない。チェアに身を委ね、何も考えず、何もせず、のんびりと時間を過ごす。
佐久間さんは「普段とは時間の流れが違う」と教えてくれたが、まさにその通りだ。家族や友人とたちと行くキャンプもそれはそれで楽しいが、誰にも邪魔されず、とにかく自由に過ごせることがひとりキャンプの醍醐味だ。
ひとりキャンプはインドアの趣味と相性が良い。タープ内で読書をしたり、タブレット端末で動画を見たり。昼寝をするのもいい。
見渡すと、ひとりキャンプを楽しんでいる中年男性が目に留まった。缶ビールを飲んでいたが、やがてハンモックに揺られ始めた。最高だ。
佐久間さんによると、ひとりキャンプの愛好者が増えているのは、用品におしゃれなものが増え、「大人の趣味として認知され始めているから」という。「おひとり様」への抵抗が少なくなっているのも背景にあるようだ。
ひとりキャンプの利点は、自分の都合で実行に移せること。「思い立ったらすぐ行ける」(佐久間さん)。ポロシャツとチノパンで気軽に出かければいい。天気が悪ければいつでもやめられる。
気をつけたいのはキャンプ場の選び方。自宅から2時間以内で行ける近場のキャンプ場を選びたい。現地で過ごす時間が多く取れ、日帰りもできるからだ。
初心者には「高規格をうたうキャンプ場がおすすめ」(佐久間さん)だ。スタッフがいて設備が整っているので安全・安心。道具のレンタルもできる。料金は高規格だと5千円、安い場合は2千円ほどだ。周囲に迷惑をかけないなどマナーは守ろう。
いつのまにか夕闇が迫ってきた。テントにこもり、マットに横たわる。夏でも山の空気は心地よい。今夜は、ぐっすり眠れそうだ。
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キャンプ場側も「ソロ」歓迎
キャンプ場もひとりキャンプを歓迎している。キャンプ場は平日の稼働率が下がりがち。ひとりキャンプは有給休暇などを利用して平日に楽しむケースが多く、リピーターになる例が多いという。稼働率の平準化につながるため、キャンプ場は「ソロキャンプ」などと呼んで集客に力を入れている。
ひとりキャンプは、中高年齢層の姿が目に付く。佐久間さんによると、バブル期に第1次オートキャンプブームがあり、現在は第2次ブームだという。「第1次のときに家族で楽しんでいた人たちが、今度はひとりで楽しみに来ているケースが多いのでは」と佐久間さんは指摘する。
(大橋正也)
[NIKKEIプラス1 2018年7月28日付]
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