映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ★アディオス』
キューバ音楽の軽快なリズム、人間味あふれる老ミュージシャンの言葉の一言一言が心に沁(し)みてくる。
名ギタリストのライ・クーダーがキューバを訪れて魅了されたのが発端で生まれたアルバムと、彼の友人ヴィム・ヴェンダース監督が撮ったドキュメンタリー映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』。
埋もれたベテランのミュージシャンを発掘、編成されたビッグバンド《ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ》は大成功。しかしいまではミュージシャンの老齢化が進んできた、ということで解散を決めて行われた《アディオス(さよなら)コンサート》。それをヴェンダースは製作総指揮に回り、英国女性ルーシー・ウォーカーが監督して前作から18年後に生まれた。
2000年に日本公開されて大ヒットした前作の続き。コンサートが楽しめるだけでなく、歌を捨てて靴磨きになっていたのが、アルバムや映画のおかげで脚光を浴び、05年に78歳で亡くなったイブライムや、03年に95歳で亡くなったコンパイ・セグンドにも再会できる。彼は「俺は遅咲きだったが、人生の花は誰にでも訪れる」と言った。
ここにはアフリカから奴隷として連れてこられた人々の中から生まれたキューバ音楽の歴史があり、昔の記録フィルムを発掘して、いまでは年老いたミュージシャンの若い日の溌剌(はつらつ)と輝く姿を見せるなど、新たな工夫がある。
米国の対キューバ融和策も進み、ホワイトハウスで歌った女性歌手オマーラが白人女性と黒人男性の間に生まれた苦難を語っても意気軒高。やはり女性の命は長い。「最後の演奏は墓の中でするか」とピアノの前に座れば自然に指が動くルベーン・ゴンサレスは03年に84歳で死去。
老いて一花咲かせたミュージシャンたちの姿は粋でただただカッコいい。1時間50分。
★★★★
(映画評論家 渡辺祥子)
[日本経済新聞夕刊2018年7月20日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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