罪悪感抑える家事ノート できたことを褒めよう
生活コラムニスト ももせいづみ
以前から、子育て中の女性を中心によく耳にする言葉に「罪悪感」というのがある。内容はいろいろ。
「子どもを保育園に預ける」「家事代行を頼む」「食器洗い機やおそうじロボットを買う」ことへの罪悪感だけでなく、「専業主婦なので、家事を家族に手伝ってもらうことに」「介護で時間がなく、自分の家の家事がおろそかになることに」罪悪感を覚えるという声も。
「えー、なにそれ?」と思う人もいるかもしれないが、「本来自分がすべき義務」を果たせていない後ろめたさのようなものが「罪悪感」の正体なのかもしれない。
日本は先進国の中でも、女性の家事・育児時間がかなり多く、男性は極端に少ないという統計がある。洗剤会社が5カ国対象で行ったアンケートでは、他国より家事時間が長いのに、「私は家事を効率よくできていない」と答えた人が半数近くもいた。ちゃんとやっているのに、自己肯定できない。その背景には、家事の完成度のハードルが高く設定されている、ということもあるように思う。
「できていない」と思う人にはよく、ノートにその日にしたことを、細かいことまで全部書き出してみて、と話す。起きる、トイレのついでにペーパーを補充する。コーヒーをいれる、着替える、カップを洗う。全部当たり前の日常だけれど、定時に起きられただけで、実はすごいことだ。ペーパーを補充したりカップを洗ったりするのも、本当は褒められていいことなんだ。
自己肯定感(セルフエスティーム)を育てる上で大切なのは、こうした「今日できて、明日もできることを出来栄えに関係なく認めて褒める」ということなのだそうだ。家事には「今日も明日も延々と続く」褒める機会がたくさんあるのに、高いハードルを作って「できていない」と罪悪感を持つのは、なんだかとてももったいないことだなあ、と思う。
この連載のテーマは「時短家事」だけれど、一つ一つの家事をどんなに時短できても、タスクを増やして高いハードルを自分で設定してしまったら、暮らしの中での家事時間や負担感は減らない。
私はよく、その日の朝に、今日気分よくできそうな家事を1~2個だけノートに書いて、それだけをやって、できたら花マルをつけて盛大に喜んだりする。「書いた以外のことまでしない」と決めるのがいいのだと思う。こうしてタスクを減らして、小さく「できた!」と自分にマルをあげるだけでも、気持ちのありかが大きく変わる。
家事のハードルは低くしておこう。低ければシェアしやすいし、ストレスもたまらない。
そしてどんどん人に任せて、できばえに関係なく、今日できた自分、できた誰かを褒め合って喜ぶ。時短家事の基本は、そんなメンタリティーにもあるんじゃないかなあ、と思う。
東京都出身。暮らし、ライフスタイルを主なテーマとするコラムニスト。本コラムを含め、自著のイラストも自ら手がける。「新版『願いごと手帖』のつくり方」(主婦の友社)、「やれば得する!ビジネス発想家事」(六耀社)など著書多数。
[日本経済新聞夕刊2018年7月17日付]
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