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映画『グッバイ・ゴダール!』 洒脱な社会風俗劇

2018/7/13付 日本経済新聞 夕刊

ミシェル・アザナヴィシウス監督は、パロディ喜劇を得意とするフランス映画の才人だが、『アーティスト』でアカデミー作品賞と監督賞を取って、世界の巨匠の仲間入りを果たした。

今回は、フランス最高の映画監督ジャン=リュック・ゴダールと妻アンヌ・ヴィアゼムスキーの関係を題材にして、多彩な趣向をつめこみ、お洒落(しゃれ)な映画に仕立てあげた。映画ファンにはぐっと来る作品だ。

『気狂いピエロ』で世界映画の頂点に立ったゴダール(ルイ・ガレル)は、新作『中国女』の主演にアンヌ(ステイシー・マーティン)を抜擢(てき)する。ノーベル賞作家フランソワ・モーリヤックの孫娘、19歳のアンヌに一目惚(ぼ)れしたのだ。

時は世界中で学生たちが反乱を起こした1968年の前後。フランスでも五月革命が起こり、あらゆる社会的な制度や常識が覆されようとしていた。

その時代のなかで、ゴダールは新妻アンヌとともにデモや集会など政治活動に熱中し、商業的な映画製作を否定する。カンヌ映画祭に行きたがるアンヌとも対立し、ゴダールは盟友の監督トリュフォーらとカンヌ映画祭を粉砕してしまう。アンヌとの仲も徐々に暗雲をはらんでいく……。

当事者アンヌの回想録が原作なので、当時のゴダールの生活の細部が生々しく描かれ、興味は尽きない。映画界で神格化されたゴダールも、日常生活では、エゴイズムと嫉妬に満ちたひとりのただの人間だった。

また、五月革命時代のパリの空気も活写され、ユーモアたっぷりの社会風俗劇として成功している。

主演のガレルはゴダールに瓜(うり)二つだし、アザナヴィシウスは随所でじつに見事にゴダールタッチを再現してくれる。画面、色彩、音楽が一丸となって、ゴダールこそがあの時代の映画だったという事実をあらためて思い知らせてくれる。1時間48分。

★★★★

(映画評論家 中条省平)

[日本経済新聞夕刊2018年7月13日付]

★★★★★ 今年有数の傑作
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…

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