熱帯夜こそパジャマで快眠 麻や綿でゆったり体温調節
なかなか寝付けない、朝起きると体がだるい――。蒸し暑く寝苦しい季節は熟睡が難しい。家電による室温調整より重要なのは、体に密着して体温調整してくれるパジャマだ。熱帯夜の快眠法を探った。
通常、睡眠中の体温は下がるが、温度や湿度が高い熱帯夜は、汗が蒸発せず体温が下がりにくい。そのせいで寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めたり。室温調整をしていても、熟眠できずに体調を崩すことがある。
快眠セラピストの三橋美穂さんは「寝具のなかで、最も重要なのはパジャマ」と説明する。体感温度が異なる家族などと同室で寝ていても、体に密着し、それぞれの体温を調節してくれるからだ。
朝起きたときに体がだるいと感じたり、明け方にこむら返りを起こしたりするのは、「薄着が原因かもしれない」と三橋さん。「夏は長袖と長ズボンのパジャマを着用したほうがいい」という。
寝苦しいからといって裸や下着のみで寝るのはNG。半袖を選びがちだが、それは体の熱を放出する寝入り時に心地よいだけ。最も体温が下がる起床の1~2時間前は気温や室温も下がるが、長袖・長ズボンのパジャマを着用すると、手や足の冷えが和らぐ。
ゆったりタイプ 寝返りも快適
デザインは、体温を逃しやすい首元が開いたタイプや寝返りが打ちやすいゆったりとしたものがおすすめ。冷え症なら、足首からふくらはぎを温めるレッグウォーマーや腹巻きの併用は効果がある。
ルームウエアなど部屋着のまま就寝する人もいるだろう。くつろぎを目的に作られた部屋着は布団の中ではゴワゴワしたり、汗の吸収が悪かったり、熱が籠もったり。安眠を妨げる一因かもしれない。
寝具のウェブ専門店「おもてなしねむり研究所」の鈴木公輔さんも「睡眠に適したパジャマを選んで」と話す。蒸れを逃したり、圧迫されている血行を促したりするため、就寝中一晩で10~20回程度、寝返りを打つ。特に「大きく動き熱を発散する夏の寝返りは豪快」と鈴木さん。生地や縫い目が柔らかく、適度なゆとりのあるパジャマが睡眠のストレスを軽減してくれる。
夏のパジャマは通気性や汗を吸う吸湿性などの機能性以外にも、速乾性や肌ざわりが重要だ。「洗濯は2日に1回が理想。襟足などは大量の汗を吸うので最低でも週1回は洗うこと」(鈴木さん)
人気の生地は、ひんやり感のある麻。綿は風通しがよく柔らかい。鈴木さんは「動物の習性上、敵に襲われるかもしれないとか、居心地が悪いと感じる環境では熟睡できない」と説明する。「肌ざわりがいいとそれだけで安心できる。肌心地で選ぶことは大事」(鈴木さん)だ。
寝る前にパジャマに着替えるのも「自然と体が睡眠モードに入る儀式になる」(鈴木さん)。軽い体操や消灯など決まりごとを作ると効果的。三橋さんおすすめの、ふくらはぎのストレッチは筋肉の緊張をほぐし、血流を促すほか、寝返りが打ちやすくなる。
もっとも、三橋さんは「暑い夏は部屋の温度と湿度をコントロールすることが大事」と説明する。室温が28度を超えると熱中症のリスクが高まる。睡眠中に発症する夜間熱中症を防ぐためにも、我慢せずに身近な家電で睡眠環境を整えよう。
室温は23~25度 徐々に上げて
温度調整は手軽にできる。エアコンを利用する場合、就寝前に寝室の温度を23~25度に設定。一晩中、温度を一定に保ちたいなら就寝時に3度上げておく。タイマー運転するなら、その日の気温に応じ1~3時間後に停止する。こうすると就寝時はひんやりとして寝つきがよく、体温が下がったころに緩やかに室温が上がるため、体に負担がかかりにくく、寝冷えも防げる。
扇風機の微風を活用する手もある。風が直接、体に当たらないように天井に向け、角度を変える首振りや強弱をつけるリズム機能を使って部屋の空気を動かす。扇風機ながら自然のそよ風のように、体感温度を下げてくれる。
熟睡を妨げるので注意したいのは暗闇でスマートフォンを見る行為。「朝の太陽光と勘違いし、睡眠を促すメラトニンの分泌を抑制する」と鈴木さん。どうしても見るなら、明かりをつけてから。
今夏は厳しい暑さが続くとされる。睡眠環境を整えて快眠し、夏ばてを防ごう。
(ライター 児玉 奈保美)
[NIKKEIプラス1 2018年7月14日付]
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