一汗かいた後のビールが危ない 夏に多い痛風を防ぐ
1日2リットルの水分を/乳製品で尿酸を排出
夏になると、痛風の発作が起こりやすい。汗をかいて脱水が進むことに加え、ビールを飲む機会が増えて尿酸値が上がるためだ。発作を防ぎ、安心してお酒を楽しむための注意点を知っておこう。
突然、足の指が腫れ上がり、まともに歩けないほどの激痛が走る――。ビールがおいしい季節、お酒を飲む習慣のある人が恐れるのが痛風だろう。原因は関節にたまった尿酸の結晶。これがはがれることで炎症が起きる。
東京女子医科大学病院膠原(こうげん)病リウマチ痛風センター(東京・新宿)の山中寿教授は「痛風患者はどんどん増え、若年化も進んでいる。かつては50代以降に発症する人が多かったが、最近は30代後半がピーク」と話す。国民生活基礎調査によると、痛風患者数は右肩上がりに増加し、2013年には100万人を突破。30年前の4倍に達した。
尿酸は体内でも作られるほか、食品に含まれるプリン体が分解される過程でもできる。血液中の尿酸値が100ミリリットル当たり7.0ミリグラムを超えると高尿酸血症。尿酸が結晶化して関節にたまるようになり、痛風発作を起こす可能性が高くなる。
尿酸値が9~10ミリグラムを超えていながら発作が起こらない人もいるが、油断は禁物。山中教授は「尿酸値が7ミリグラムを超える状態が長く続けば、それだけ発作を起こす確率が高くなる」と警鐘を鳴らす。
足の指や足首に発作が起きるのは、体温が低いので結晶がたまりやすく、歩くときの振動ではがれやすいため。女性ホルモンには尿酸値を下げる作用があることから、痛風患者の95%は男性だ。医療機関を受診すると、尿酸の合成を抑える薬や排出を促す薬を処方される。
尿酸値が上がらないように、プリン体が多いビールの替わりに、プリン体ゼロの発泡酒や焼酎を飲めば安心、とは言えない。「アルコール自体に尿酸値を上げる作用があり、酒量が多いほど痛風の発症率は高くなる」と長瀬クリニック(東京・板橋)の長瀬満夫院長は指摘する。尿酸値を上げない1日の目安量はビールで中瓶1本(500ミリリットル)、日本酒なら1合(180ミリリットル)程度という。
プリン体が多いレバーや白子をなるべく食べないという人も多いが「プリン体はすべての食品に入っている。含有量が多い食品を控えるよりも、食べる全体量を減らすのが大切」(山中教授)。尿酸の排出を促し、尿酸値を下げる作用があるたんぱく質、カゼインを含む牛乳やチーズなど乳製品は取りたい食品だ。
食事や酒のほかにも尿酸値を上げる要因はある。代表的なのが脱水。発汗量が増える夏は特に注意が必要だ。尿酸は尿として体外に排出される。水をたくさん飲んで、脱水を防ぎ、尿酸の排出を促そう。「ノーカロリーの水かお茶を1日2リットル飲むとよい」(長瀬院長)
ストレスは「それ自体よりも、その対処法次第で尿酸値が上がりやすい」と山中教授は話す。暴飲暴食など肉体に負担をかける方法ではなく、健康的にストレスを解消できる趣味を持つとよいだろう。
運動するなら、ウオーキングや水泳といった有酸素運動は尿酸値を下げるのでオススメだ。筋力トレーニングなどの激しい無酸素運動は、尿酸値を上げる作用があるので注意しよう。
暑さで汗の量が増える夏、スポーツやサウナで大量に汗をかいた後にビールを飲むと、一気に尿酸値が上がる。「尿酸値が高い人は大量に飲酒したはずみに発作を起こしやすい」と長瀬院長は警告する。汗をかいたらビールの前にいったん水分を補給。飲み過ぎに注意して、節度ある酒を楽しもう。
(ライター 伊藤和弘)
[NIKKEIプラス1 2018年7月14日付]
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