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タワーマンションの増加が都心に人口を呼び込んでいる(タワーマンションが林立する東京都中央区)

タワーマンションの増加が都心に人口を呼び込んでいる(タワーマンションが林立する東京都中央区)

東京への人口集中が進んでいると聞いたけど、実際はどうなのかな。東京一極集中で何か問題は起きているの。国や東京の自治体はこうした状況にどう対応しているの。

東京一極集中の現状や課題について小川めいこさん(46)と長谷明日香さん(28)が斉藤徹弥編集委員に聞いた。

――東京一極集中の現状について教えてください。

歴史を振り返ってみましょう。全人口に占める東京都人口の比率は、景気が良くなると高まる傾向があります。高度成長期には1973年の石油危機直前に11%まで上昇しました。バブル崩壊後には9.4%まで低下しましたが、いまの景気回復により再び10.8%まで上昇してきています。景気が良くなると、東京の企業が業容拡大のため人を集めようとするからです。

東京都に神奈川、千葉、埼玉県を含めた東京圏でみると2000年代を通じて毎年10万人前後の転入超過が続いています。金融自由化やグローバル化も東京の方が仕事を見つけやすい状況を生んでいます。08年以降、全人口が減少する中で東京圏への人口集中はより顕著になっています。

国の政策の影響も大きいです。01年に発足した小泉政権は首都の国際競争力を高めることを狙い、東京の都市再生事業に力を入れました。都心の高層ビルや湾岸部のタワーマンションが次々に建てられました。その結果、東京圏への企業の転入が転出を上回るようになり、一層、人が東京に集まってきています。最近は特に都心4区(千代田、中央、港、江東の各区)の人口増が目立ちます。

――どんな問題が起きているのですか。

まずは保育所や学校の不足です。自治体や企業も保育所をつくっていますが、保育所が増えれば、さらに子どもを預けて働きたいという潜在需要が顕在化して、いつまでたっても待機児童がなくならない状況になっています。

小学校の不足も深刻です。江東区では1つの小学校をつくるのに約150億円かかるといわれますし、土地の確保も容易ではありません。また小学校の計画から完成までに4~5年を要するのに対し、タワーマンションは3年ほどで完成するので、その間にミスマッチが生じます。

高齢者施設の問題もあります。民間有識者でつくる日本創成会議によると、現時点では都区部の高齢者施設の不足は多摩地区や周辺3県の施設で補われていますが、25年にはそれも難しくなり、施設に入れない高齢者が急増する恐れがあります。施設をつくるのも介護人材を集めるのも容易ではありません。ほかにも首都直下地震が起きれば、100万人単位で避難所生活者が出ることが予想されるなど、防災面の問題も深刻です。

――東京都や23区はどう対応しているのですか。

東京都としては居住者が増えれば税金も増えるので、直接的な規制には慎重です。東京都の適正な人口はどの程度なのかといった具体的な数値目標は検討していません。

23区も人口が増えるのは歓迎ですが、様々なインフラの整備が切実な問題になります。中央区は中小マンションを抑制するため、住宅建設に対する容積率の緩和を一部廃止する方針です。銀座や日本橋などの都心部でも、大型再開発区域を除いて100戸程度のマンションは建設しにくくなる見通しです。

また江東区では学校不足に対応するため、マンション建設でファミリー向け(40~90平方メートル程度)の戸数を全体戸数の8割未満にするよう求める制度が10月に始まります。

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