洗えるジャケット カギは「脱水時間1分」
洗濯家 中村祐一
今年も汗をかく季節がやってきた。クールビズの浸透で夏の軽装が広がったとはいえ、ジャケット着用が必要な場面もあるだろう。
最近は紳士服、婦人服を問わず「洗えるスーツ」や「洗えるジャケット」を売り場でよく見かける。自宅で手軽に洗えるという触れ込みだが「本当に水洗いして大丈夫なのか不安」「洗い上がりがヨレヨレで、商談には着ていけない」といった声も聞く。
上手に洗うコツは(1)洗濯表示を必ず確認(2)おしゃれ着用の中性洗剤を使う(3)脱水は短く、肩に厚みのあるハンガーで干す――の3つだ。
はじめに、洗濯表示を確認する。洗えるスーツには必ず、洗濯可能の表示がある。洗えないと思っていたアイテムが実は洗濯可能だった、ということも案外多い。まずは表示を調べよう。洗える表示がないアイテムだと、洗った後に形崩れを起こすので家庭での洗濯は難しい。
おしゃれ着用の中性洗剤は、どんな素材のジャケットやスーツにも対応する。全体を洗う前に、汚れのつきやすい襟や袖口、ポケット口などを確認しよう。汚れが気になる場合は洗剤の原液をつけ、軽くなじませてから40度以下のお湯ですすぐ。白や淡い色のジャケットは、部分洗いを入念にすることで黄ばみの予防につながる。
部分的な下洗いが終わったら、洗濯機に入れる。ネット使用についても洗濯表示があるのでチェックしよう。言及がなければ、ネットは不要だ。
洗濯機の「ドライコース」「手洗いコース」「おうちクリーニングコース」といった、やさしく洗うコースを選ぶ。シャワーで流すタイプのスーツは、洗濯機ではなくシャワーで洗う。
水量や洗濯物の量に応じた分量のおしゃれ着用洗剤を、洗濯機に入れる。スイッチを入れる前に欠かせないのが、脱水の設定だ。洗えるスーツでも、長めに脱水するとシワや形崩れを起こしやすい。できれば脱水時間を「1分」に設定し、シワを最小限に抑えよう。洗濯後に取り出して脱水が足りないと感じたら、1~2分脱水を追加する。
脱水が終わったら、形を整えてハンガーにかけて干す。洗濯用ハンガーによくある細いタイプだと、干している間にジャケットが形崩れを起こすので、肩に厚みのあるスーツ用のハンガーを使おう。シワを完全になくすことはできないが、アイロンの手間は最低限で済むはず。乾いた後はシワが気になるところだけ、アイロンのスチームを当てればよい。
洗えるアイテムを上手に手入れして、蒸し暑い夏を爽やかに乗り切ろう。
1984年生まれ。クリーニング会社「芳洗舎」(長野県伊那市)3代目。一般家庭にプロの洗濯ノウハウを伝える「洗濯家」として活動。「洗濯王子」の愛称でメディア出演も。
[日本経済新聞夕刊2018年7月3日付]
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