ハッカ油で夏の暮らしを快適に
日本在来のミント、ハッカ草から作るハッカ油(ゆ)。さまざまな生活シーンで活用できる精油として注目されている。夏を快適に過ごす使い方を探った。
天然ハッカ油はシソ科の植物、ハッカの茎や葉から蒸留抽出した精油だ。スーッとした清涼感のある強い香りが特徴で、ドラッグストアなどでは20ミリリットル入り600円程度で売られている。主成分メントールの含有量は、西洋種のペパーミントやスペアミントの精油よりも多い。爽快な香りのもとであるメントールは、防虫や抗菌など様々な効用が期待できる。
消臭効果に期待 カビ防止にも
「はっか油の愉しみ」の著者、前田京子さんは20年以上ハッカ油を愛用する。製薬会社が製造するハッカ油はアロマテラピー用のほかの精油とは異なり、「昔から世界各地で常備薬や歯磨きなどに使われていた」(前田さん)。1950年代頃まで実際に使われていた欧米の薬局方をまとめた米国の医薬専門書を参考に、自身が実践するハッカ油の使い方を提案している。
例えば、ハッカ油を水と梅酒作りに使うホワイトリカーに混ぜて作るエアフレッシュナー。空気清浄スプレーとして、食事の後片付けを終えたキッチンで使う。空中だけでなくシンクや排水口、生ゴミにもシュッシュッ。たちまち部屋中に爽やかな香りが広がった。「臭いが気になる夏場のキッチンには欠かせない。消臭以外にコバエやゴキブリよけ、カビ防止にもなる」(前田さん)
簡単なのは化粧用の丸いコットンボールにハッカ油を数滴しみ込ませる方法。小皿などにのせて家のあちこちに置くだけで、空気清浄や抗菌作用を発揮する。クローゼットの引き出しや玄関、靴箱に入れるのもいい。前田さんは「仕事中のデスクに置いておくと、眠気覚ましや気分のリフレッシュになる」という。
コットンボールのほか、化粧用のパフや折り畳んだティッシュにしみ込ませるだけでもいい。香りがしなくなったら、ハッカ油を追加する。
キャンプや花火などアウトドアシーンでもハッカ油は活躍する。ドラッグストアで買える保湿成分のワセリンに、ハッカ油を垂らしてよく混ぜ合わせたバームは便利だ。前田さんによると「蚊、アブ、蜂などはハッカ油の香りが苦手」。塗り薬のようにバームにして肌にすり込めば、揮発しやすい液体スプレーより香りが長持ち。2~3時間は効果が持続する。蚊に刺されてしまったら、同じバームでケアを。スーッとするメントールがかゆみを遠ざける。
ハッカのバームはまず腕や背中に少量塗り、かぶれや発疹が出ないか、試そう。敏感肌の人は使用を控えるか、ハッカ油の分量を減らして濃度を薄める。不用意に原液を直接皮膚に塗るのは避けよう。
ハッカ油は夏のバスタイムにも取り入れたい。体感はひんやりするが、体温を下げるわけではない。ハッカ油には末梢血管を広げ、血行をよくする働きがある。清涼感を覚えながら、夏の冷え予防ができる。「ハチミツと混ぜるバスハニーがおすすめ」と前田さん。肌への刺激が和らぎ、ハチミツの保湿力で肌がすべすべになるという。
ラベンダー精油 バスハニーに
今回紹介したハッカ油の使い方はバームを除き、アロマ用のペパーミントの精油でも代用できる。ハッカ油よりメントールが穏やかだ。
緊張をほぐし、リラックスさせる働きがあるラベンダーの精油もエアフレッシュナーやバスハニーとして、ハッカ油とは違う楽しみ方ができる。日本アロマ環境協会(東京・中央)認定アロマテラピーインストラクターで、生活の木(東京・渋谷)マーケティング本部の北川由以さんは「一般的に炎症をやわらげるとされているので、虫刺されや日焼けのケアにも役立つ」。
またシトロネラはそのレモングラスに似た香りを虫が嫌うため、夏の虫よけに高い効果が期待できると注目されている。北川さんは「肌に直接つける場合、アロマオイルは1%以下に希釈すると安全」とアドバイスする。
ただ、香りに敏感な妊婦や猫を飼っている人は要注意。猫は精油で中毒を起こす恐れがある。虫が嫌う香りの場合は、カブトムシなどを飼う人も気をつけよう。安全性に配慮しつつ、夏の健やかな暮らしに精油を取り入れたい。
(ライター 松田 亜希子)
[NIKKEIプラス1 2018年6月30日付]
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