昨年並みのはずなのに… 年金手取り額が減った理由

ただこの仕組みは物価や賃金が下がるデフレ下では実施しないなどと決まっている。このため18年度は実施しなかった。同年度の調整率は0.3%。発動されれば、「据え置き」ではなく、額は0.3%減るところだったが、この分は19年度以降で年金が増えるときに相殺することになった。

減少に備え必要

年金を取り巻く環境は厳しいことから、「受け取る年金額はもう増えないぐらいに考えておくべきだ」(社会保険労務士の東海林正昭氏)とよく言われる。

ただ見てきた仕組みからすると、物価や賃金が上がりさえすれば、額が増える場合はある。例えば、物価が1%、賃金が1.5%上がって、調整率が0.5%だとすれば、年金は最初の決定時は1%増え、すでに受け取っている人でも0.5%増えるはずだ。天引きされる税や保険料が大きく変動しなければ、振込額が増えることもあり得る。

物価が少しずつ上がり、それ以上に賃金が増えていくのが経済成長の理想像。日本経済がこのような安定軌道に乗れば、振込額をみていつもため息という状況は変わるかもしれない。

とはいえ、少子高齢化で長期的にみると、年金の実質的な支給水準(所得代替率)は少しずつ減っていくことは間違いない(図C)。年金だけに頼って暮らすことはより難しくなる。

社会保険労務士兼税理士の佐藤正明氏は「長く働いて賃金を得ることや、年金の受け取りを65歳超に遅らせて額を増やす『繰り下げ受給』を活用すること、個人年金に加入することなど公的年金を補う手段は複数検討しておきたい」と話す。年金受給者でいまさら働けないといった人は自宅を担保に生活資金を借りるリバース・モーゲージなども検討に値するだろう。

(編集委員 山口聡)

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