ストリートダンス、再びフィーバー シニア記者が挑戦

NIKKEIプラス1

ストリートダンスの全国大会(東京都墨田区の両国国技館)
ストリートダンスの全国大会(東京都墨田区の両国国技館)

EXILEで火が付き、中学校での必修化で裾野が広がったストリートダンス。最近、シニアの間で人気だという。35年ほど前、ディスコに通った記者(55)も負けてはいられない。格好良く踊ろうと、教室の門をたたいた。

5月中旬、東京・新宿にあるダンス教室「NOAダンスアカデミー」に入門した。先生になってくれたプロダンサーのHinoken(27)さんによると、ストリートダンスは1960年代前半、米国のアフリカ系住民の間で誕生。以降、路上で格好良く見せるダンスとして進化した。

ストリートダンスという名前の踊りはなく、頭や背中を地面につけて回るブレイクダンス、体を上下動させてリズムをとるヒップホップなどジャンルは様々。かつて流行したディスコダンスもこのカテゴリーに入るらしい。ブレイクもヒップホップも難易度は高そう。尻込みする記者に「比較的スローテンポのソウルダンスでいきましょう。中高年の女性も楽しんでいますよ」と先生は提案した。

大鏡のある教室でスタート。流れる音楽は、記者が青春期、何度も聞いたアース・ウインド&ファイアーの「レッツ・グルーヴ」だ。

「8拍のリズムに合わせて両足を右側に4拍、左側に4拍ステップします」。先生の動きにならい、生徒7人が足を動かす。「ワン」で右足を斜め前、「ツー」で左足を右足の後ろ、「スリー」で右足を横にステップ。悲しいかな、記者は初めの3拍で足がついていかない。他の生徒は流れるようなステップだ。

とはいえ昔、ディスコでステップを刻んだ身だ。ほどなく慣れた。だがディスコと異なり左右に前に後ろにとスローながらせわしなく踊るので、じわじわと発汗。やがて先生は両腕を素早く動かす「ロック」という今どきのダンスを織り交ぜる。右腕、左腕、そして右手首を回しながら右腕をL字型にして肩まで持ち上げる。踊りながらなので、順番も間違えてしまう。

一連の動作を先生に演じてもらい、スマートフォンでビデオ撮影し帰宅後、何度も復習した。1回のレッスンは90分。ビジター料金として初回1080円(税込み)、それ以降は同3240円を支払う。計4回、6時間のレッスンをこなし「レッツ・グルーヴ」の初めの3分ほどの振り付けは何とかマスターした。すると4回目のレッスンに参加していた同世代の女性から「もっと腰を上下動させたほうがいい」と助言される。

ストリートダンスの肝は、腰をしっかり入れることだという。確かに、腰を入れないでステップしたり腕を振ったりすると、コメディアンの萩本欽一さんの動きになってしまう。腰を下ろし重心を沈み込ませると格好良い。

往年の体をくねくね動かすだけだったディスコダンスから今風のソウルダンスへ。スポーツ感覚も味わえ、何より楽しい。90分のレッスン後、体重計に乗ると800グラムほど減ったのもうれしい。

シニアの間で高まるストリートダンス熱。「渋谷ストリートダンスウイーク」を企画・運営するパルコ・エンタテインメント事業部の中西幸子さんは「ディスコに通っていたと思われるシニアが、凝った衣装で孫と一緒に踊る姿が目立つようになった」と話す。2015年から東京・渋谷の代々木公園で開催するこのイベントには1週間で1万人以上が参加し、シニアの存在感が年々増しているという。

ストリートダンスが幅広い層に広まったのは、スターの影響が大きい。「先駆者は安室奈美恵さん。EXILEの登場と成功でブームに火が付いた」(中西さん)

12年度から中学校でダンスが必修化されると拍車がかかる。学校がストリートダンスを受け入れたことで、これまでの不良っぽいイメージがなくなり、裾野が広がった。10月にアルゼンチンで開かれるユース五輪ではブレイクダンスが採用される。老若男女のハートをつかむダンスの可能性は広がる一方だ。

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大会も花盛り 腕前競う

ストリートダンスの全国大会(東京都墨田区の両国国技館)

ストリートダンスの腕前を競う大会も花盛り。中でも4月下旬、東京・墨田の両国国技館で行われた全国大会「ダンス アライブ ヒーローズ ファイナル2018」は今回で13年目、ダンサーの間では目標となる大会だ。

単に踊るのではなく、ディスクジョッキー(DJ)が選曲した音楽に合わせて即興で踊るのが特徴。踊り手がDJと一対一で向き合う緊張感が売りだ。今回、過去最高の約1万3000人が来場した。

8月にはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)で「ワールドカップ」がある。優勝賞金は1000万円だ。

(保田井建)

[NIKKEIプラス1 2018年6月16日付]

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