食卓彩るピクルス ゆで卵や豆腐も素材に
酢を使った常備菜、ピクルスが人気だ。作り方は簡単で、手軽に野菜がとれ、見た目もカラフル。工夫次第で料理の幅も広がる。これからの季節に重宝するピクルスの作り方と活用法を紹介する。
ピクルスといえば、ハンバーガーのキュウリを思い浮かべる人は多いだろう。しかし、野菜に限らず様々な食材のピクルスが注目を集めている。
ゆで卵や豆腐も 余った具材で
「余った野菜で料理の合間にサッと作り、常に作り置きしている」と話すのは、料理研究家の森崎繭香さん。ゆで卵や水切りした豆腐もピクルスにする。1人で食事するときや一品足りないというとき、冷蔵庫の瓶から取り出し、食卓に並べている。
作り方は簡単だ。まずは野菜などを切り、アルコール消毒して拭き上げた密閉容器に詰める。拍子切りや輪切り、乱切りなど切り方で味わいは変わる。次にピクルス液を作る。鍋に酢や水、砂糖、塩を入れてハーブやスパイスも一緒に加えて加熱。一度沸騰したら全て容器に注ぎ入れ、粗熱が取れたら冷蔵庫に移す。
一晩おけば食べられるが、時間の経過で味や固さ、食感が変化していく。豆腐は3日間と短いものの、毎回、清潔な箸で取り出すことで、野菜など10日間ぐらい楽しめる。
ピクルス液の調味料は、好みで使い分けるといい。米酢や黒酢のほか、リンゴ酢は爽やかで、白ワインビネガーは酸味が強め。水の代わりに和風ダシを用いてしょうゆを加えると和風ピクルスになる。
用途を考えて作るのも一案だ。森崎さんが提案するのは「お弁当ピクルス」。トマトやヤングコーン、ズッキーニは色鮮やかで、弁当の隙間に入れられて便利。リンゴ酢で作ると子どもも食べやすい。
箸休めではなく、主菜にいかせるものもある。「ミョウガとショウガのピクルス」は、紫タマネギも入れてローリエで風味付け。美しい色や独特の苦み、シャキシャキとした食感をピクルスとして味わうだけでなく、簡単にちらし寿司に転用できる。
ミョウガやショウガは細かく刻んで加える。温かいご飯1人分に対しピクルス液を大さじ1程度振りかけ、切るように混ぜる。彩りよく錦糸卵や刺身を載せれば、パーティーや来客時にも出せる爽やかな夏の食卓の主役になる。
ゴボウやレンコン、ニンジンを使った「根菜のピクルス」もおすすめだ。ピクルス液は水の代わりに和風ダシを使い、しょうゆを加えて中国料理の香辛料、八角1個のほか、赤トウガラシ1本、ショウガ1かけ分を煮立てて作る。エスニックな風味とカリッポリッとした食感で後を引く。
鶏の手羽元と煮込むと食べ応えのあるおかずに変身。ピクルス液と水、黒糖、しょうゆを足し、ピクルスも加えて煮ると、さっぱりした味わいで食が進む。
硬い素材などは下ごしらえが必要になる。根菜やイモ類などは皮むき後、沸騰した湯で30秒程加熱する。ブロッコリーやスナップエンドウなどは同様に10秒程度加熱、キノコ類は湯通しする。「卵のピクルス」は味付け卵のように「好みの固さでゆでて」と森崎さんはアドバイスする。
残った液活用し ドレッシング
野菜の栄養が溶け込んでいるので、残ったピクルス液を捨ててしまうのはもったいない。どのピクルス液も酢豚などで酢の代わりに使える。簡単なのはオリーブオイルと混ぜるドレッシングや、ごま油と合わせて冷やし中華のタレにする方法。蜂蜜を加え、湯や水で割って飲んで楽しむこともできる。
最近はインターネット通販などで「ご当地ピクルス」が注目されている。
静岡市の「和ピクルス専門店こうのもの」は静岡産の野菜や果物、キノコ類を季節ごとに15種類程度を販売する。静岡市内で醸造された酢や焼津産のカツオ節と羅臼産昆布を使う。エリンギなどキノコのピクルスが人気だ。「ダシとキノコのうまみが相乗効果をもたらすからでは」と、店長の滝昌弘さんは話す。
栃木県の茂木町にある「雨余花」(ドライブイン茂木内)は近隣の農家から仕入れる野菜をピクルスにして販売する。天日干しにした後、ピクルスにすることで、野菜の甘みやうまみが増すほか、ピクルス液がしみこみやすくなり、食べ応えがでるという。
材料や手間を変えれば様々な楽しみ方ができる。我が家の味を探してはいかが。
(ライター 五十嵐 幸子)
[NIKKEIプラス1 2018年6月9日付]
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