コクがあり臭くない 東大阪市の黒にんにくカレーパン
約6300カ所の町工場がひしめく大阪府東大阪市。ものづくりの町が2019年に開催予定のラグビーワールドカップ(W杯)に大勢の観客を呼び込むべく、町おこしに懸命に取り組んでいる。食の面で「主力選手」の期待を担うのがカレーパンだ。
5月の日曜日、雨模様の中、毎年恒例の東大阪市民ふれあい祭りが開かれた。近鉄奈良線八戸ノ里駅前に店舗を構え、食のイベントで受賞実績のあるパン工房鳴門屋など、「東大阪カレーパン会」に所属するベーカリーショップなど5店が出店した。
なかでも異色の存在が、花園ラグビー場近くで販売された「黒にんにくカレーパン」だ。健康食品会社、食工房のだ屋(東大阪市)が営むカレー店「カナメカリー」が作る油で揚げるタイプのカレーパンだ。
大阪市内で自動車部品会社を経営する野田勝さん(75)が黒にんにくの効能に着目してのだ屋を設立、長女の野田優子さん(41)が手伝う。黒にんにくを使ったカレーのフィリングはコクがあり、にんにく独特の臭いがしない。
ものづくりの町がなぜカレーパン? 東大阪市にはかつてハウス食品が工場を構え、カレールーを作っていた。市や商工会議所が名物グルメに育てようと2011年に東大阪カレーパン会を設立。ラグビーをイメージさせるパンが入会条件の一つで、入会したての「カフェ&ベーカリー Ciel」など約30店が加盟する。
カレーパン会が食品メーカーと開発したフィリングを使う店もあるが、独自のものを使ったり、油で揚げずに焼いたり、変形させたり。店舗が個性を打ち出して競い合う。
JR学研都市線徳庵駅近くに昨年5月、「大型新人」が彗星(すいせい)のごとく現れた。大阪市の新梅田食道街の人気カレー店「マサラ」が開いた「カレーパンショップMASARA」だ。店主の山本健二さん(35)は地元ラグビーチーム近鉄ライナーズのOB。
人気No.1の「マサラドッグ2」はホットドッグに牛ミンチを使ったカレーソースをたっぷりかけて刻みタマネギを載せ、オーブントースターで軽く焼いて仕上げる。身長180センチメートルの元ラガーマンが作るだけあってボリュームは超重量級。山本さんは「W杯の盛り上げに一役買いたい」と闘志をみなぎらせる。
どのカレーパンも100円台からと価格は手ごろ。ビールなどのアルコール類にもよくあう。カレーパンを片手に花園ラグビー場でW杯を楽しむ観客も多いだろう。
東大阪ツーリズム振興機構がラグビーW杯に向けて名物グルメに育てるべく公募で選んだのが3種類の「ラグビーめし」だ。中でも2種類のカレーをかけた「東大阪ラグカリー」はコンビニエンスストアのセブン-イレブン・ジャパンが期間限定で販売したり、提供する店舗も少しずつ増えたりするなど、柱に育ちそうな雰囲気がある。
一方、メンチカツを載せた「花園丼」と鍋焼きタイプの「すきやき風花園うどん」は宣伝不足もあって飲食店になかなか広がらず、テコ入れが急務になっている。
(東大阪支局長 苅谷直政)
[日本経済新聞夕刊2018年6月7日付]
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