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介護施設で会話や見守り 広がる「ロボットセラピー」 衛生的で安心感、現場の負担軽減も

2018/5/23付 日本経済新聞 夕刊

 コミュニケーション機能のあるロボットで高齢者を癒やす「ロボットセラピー」が広がっている。動物と接する「アニマルセラピー」はストレス軽減などの効果が認められているが、ロボットとの会話なども高齢者を癒やし、近い効果が見込めるという。動物を取り扱うことが難しい介護施設でも利用でき、衛生面や利用者がけがをするリスクが低いため、導入するケースが増えている。

ハイタッチするaiboと戯れる入居者(右)とその家族(さいたま市のソナーレ浦和)=ソニー・ライフケア提供

 「いい子ねぇ」。高齢者が笑顔でなでていたのは、ソニーの犬型ロボ「aibo(アイボ)」だ。

 ライフケアデザイン(東京・渋谷)が運営する「ソナーレ浦和」(さいたま市)のエントランスにはaiboが1台「放し飼い」されている。「あら、こんな所にいたの」「お座りは?」。近くを通る時、入居者や職員らが次々と声をかける人気ぶりだ。

 ソニー・ライフケア(東京・渋谷)は4月から傘下のライフケアデザインとプラウドライフ(横浜市)の有料老人ホームにaiboを導入。担当者の近藤直子さん(56)は「表情があってかわいらしく、入居者も職員も癒やされる。訪れる家族にも好評で、面会が増えている印象」と喜ぶ。

 認知症が進んだ高齢者にも変化がみられるという。近藤さんは「普段は表情に変化がない入居者も、aiboと触れ合うと優しい笑顔になる」とほほ笑んだ。

 富士ソフトのヒト型ロボ「PALRO(パルロ)」は会話力が武器だ。表現の幅が広く、話しかけると約0.4秒で返答できるため、自然な会話が可能になった。また、旗揚げゲームやダンスもでき、介護施設で「レクリエーション担当」として導入が進んでいる。

 同社の上竹淳二パルロ事業部長は「レクリエーションは、内容を考え、つきっきりで対応する必要があり、介護現場の負担になっていた。パルロを導入し、職員はレクリエーションから少し目を離して入居者の排せつ介助などもできるようになった」という。

 パルロの効果は日本医療研究開発機構(AMED)によるコミュニケーションロボットの実証実験の結果として2017年に報告されている。介護を受ける高齢者らの34%は生活が活発になり、介護する側の負担軽減効果も44%だった。

 MJI(東京・港)の「TAPIA(タピア)」は卵形のフォルムにキョロキョロ動く大きな目が特徴だ。目元がタッチ式ディスプレーになっており、家族の携帯とつないでテレビ電話をしたり、単身者などの見守りをしたりできる。

 愛らしい大きな目は、人がかわいく感じる白目と黒目の比率を研究して開発された。同社の千葉さやかディレクターは「家庭になじむロボットを目指しており、高齢の親を持つ世代に『ついなでてみたくなる』と好評」とアピールする。

 MJIは福祉用具製造の幸和製作所と介護施設向けタピアの共同開発を進めており、実証実験を経て18年度中の完成をめざす。人がベッドから落ちそうになったり、起き上がったりしたときに管理者に警告する機能を追加する。

 コミュニケーションロボットの重要性について筑波学院大学の浜田利満客員教授は「高齢者に人間らしく生きてもらうためには、社会性の維持が最も重要。こうしたロボットは高齢者をコミュニケーションの場に連れ出すきっかけになる」と活用に注目している。

◇  ◇  ◇

■導入促進へ費用課題に

 政府は2017年10月、介護ロボットを開発する重点分野を改定し、新たにコミュニケーション分野でも支援することを決めた。厚生労働省は「高齢者らの日常生活の変化を目指して支援を進めていきたい」としている。

 介護現場のほか、家庭で介護のためにコミュニケーションロボットを導入する際、価格が大きな障害となる。

 政府は介護ロボット普及のために15年度の補正予算で52億円の助成金を盛り込んだが、支援対象となったのは移動する際などの介護や排せつ支援などに利用するロボットで、コミュニケーションロボットは対象外だった。厚労省によると、「コミュニケーションロボットの導入を支援する自治体はまだ少ないのが現状」という。

(鬼頭めぐみ)

[日本経済新聞夕刊2018年5月23日付]

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