我が家に合うのは？　掃除道具選びは家の観察から

心地よい生活を求めるが、そのための家事の手間は最小限にしたい、と誰しも思う。

それゆえ、汚れがサッと落ちる布巾類、置くだけで汚れが付着しない薬剤類、入れるだけで見た目よく片づく収納容器など魅力的なモノをすぐに、手元に引き寄せたくなる。だが、そうしたモノをいきなりそろえてみても、一向に家事の手間が減る実感はないようだ。それは当然だ。

我が家に求める心地よさ、手間を減らしたい家事、その家事にかける手間暇、家族数などを、前もってよく見極めることが欠かせない。その上で、使う道具や容器類などを厳選し、我が家のライフスタイルとピッタリ符合させなければ、手間など減るはずもない。

友人に超床掃除嫌いの女性がいる。何としても床掃除に時間を割きたくない。しかし自宅の床の汚れの実態、掃除機の使用回数、掃除機の手入れ回数など、しっかりと見据えることなく、友人はすぐに自動掃除機を選び、手間がかからなくなったと喜んでいた。

ところが、使い始めると、選んだ自動掃除機の集じん量が小さいことに気が付いた。毎日稼働させると、あっという間に満杯となる。確かに、自分で掃除機を稼働させる手間は減った。しかし、新たに発生した集じん機の手入れが想像以上に手間であったそうだ。使用して間もないのに、床掃除嫌いに拍車がかかったという。数カ月後、彼女はアッサリと自動掃除機を手放した。

手間をかけず、手早く、ラクにしてくれるのが家事道具。家事を進める上では欠かせない必需品だと、私は思う。自動掃除機にしても、条件が合えば実に役立つ道具だ。だが、彼女の例でも分かる通り、必需品選びに家の実情が意外と考慮されていないのだ。

例えば掃除道具を選ぶ場合、まず、我が家の各部屋のゴミのたまり具合を観察すべきだ。次に、掃除の仕方の実態と手間のかけ方、どの手間をどの程度減らしたいかをしっかり整理する。我が家の手間減少を具体的に考えなければ、改善したように見えて、実際には一向に減らない。それでは意味がない。

彼女の床掃除の場合でいえば、床に掃除機をかける手間を減らすことを目的として掃除機選びをすればいい。そこでは、集じん量に注目するのがポイントとなる。まずは集じん量比較をし、その上で価格、消費電力、使い勝手などで選ぶだけでよかったのだ。

心地よく暮らしたいというのは、本来誰もが思うことであり、それを実現するのが家事だ。だから合理的に我が家の実情を見据えれば、手間や時間を減らす道筋をつけやすくなる。我が家観察に徹して、家事道具を厳選すれば失敗がないと、私は思っている。

阿部絢子（あべ・あやこ）

　薬剤師の資格を持ち、洗剤メーカー勤務後に消費生活アドバイザーに。家事全般や食品の安全性の専門家として活躍。「モノ・人・お金　自分整理のすすめ」（中経出版）「ひとり暮らしのシンプル家事」（海竜社）など著書多数。

［日本経済新聞夕刊2018年5月22日付］