欧州での経験、生産に生かす 製品の寿命に翻弄も
TDK社長 石黒成直氏(下)
欧州工場で進めていた生産改革プロジェクトのメンバーと(96~97年ごろ、右から2人目が本人)
14年間の欧州勤務から帰国した。
1980年代後半に当社の売上高の約4割を占めていた磁気テープはCDの登場など記憶媒体の主役交代で先細っていきました。上釜健宏さん(現会長)に呼ばれて、2004年に帰国。ハードディスク駆動装置(HDD)向け磁気ヘッド事業の担当となりました。
精密部品を作る浅間テクノ工場(長野県佐久市)での生産管理部門の仕事です。00年代はHDDの黄金時代で日進月歩で技術革新が起こり、新製品が次々に開発されていました。ただ当社が受け持つ磁気を読み取るヘッド部品は生産に数カ月かかっていました。
欧州工場での生産改革の経験を生かす。
生産ラインを見て回ると、複数の工程で渋滞を起こし製造が頻繁に止まっていることがわかりました。渋滞を解消するだけで生産期間は短縮できるはずです。ルクセンブルクの経験を生かそうと「リードタイム半減プロジェクト」を立ち上げました。
皆でアイデアを出し合い、時間短縮に取り組みました。進捗ぶりを紹介する壁新聞を作って廊下や食堂に張り出しました。見出しは「リードタイム順調に低下中!」といった内容です。成果や課題を共有してモチベーションを高める工夫です。現場の意見を尊重し、チームに動いてもらう仕組みづくりは欧州勤務で学んだものです。当初の目標は1年ほどで達成しました。