『友罪』 贖罪意識 背負い生きる
『64――ロクヨン』(2016年)、『8年越しの花嫁』(17年)等の瀬々敬久(ぜぜ・たかひさ)監督が、薬丸岳(がく)の同名小説を映画化した。
現代的なシチュエーションからひきおこされる罪とその結果の贖罪(しょくざい)意識を重く背負いつづける人々をえがく群像劇である。
中心になるのは、益田(生田斗真)と鈴木(瑛太)の青年2人。2人が、ある工場に勤務しはじめるのが最初のシーン。彼らは、ほかの社員2名のいる会社の寮に住みこむ。
益田は、以前は週刊誌の記者をしていた。鈴木は、ろくにあいさつもせず、気味わるがられるが、溶接等の技術は身についている。毎夜、うなされている。
どうやら「鈴木」は偽名で、十数年まえに日本中を騒がせた猟奇的な児童連続殺害を犯した、当時14歳の少年が、彼の正体ではないのか、と益田は気づいていく。そのころには、益田は鈴木の唯一の友人といえる存在になっていて、そうなるには益田のなかにある、ある罪の意識が原因となっていた。
ほかに、交通事故で3人の子どもを死なせた息子の罪を背負う老タクシー運転手、山内(佐藤浩市)、医療少年院で猟奇殺人犯の少年を担当していた白石(富田靖子)、AVに出演していた過去に追われる美代子(夏帆)らが、ある者は軽く交差し、ある者は密接に鈴木たちにからみ、重く、はげしい人間模様を織る。
だれもが、自分の、あるいは繋累のおこしたことでおしつぶされそうで必死になっているが、鈴木が叫ぶように「生きる価値なんてないんだけど、それでも生きたいと思ってるんだ!」。その必死さのなかで生きつづけるしかないのだろう。
俳優陣は、みな好演。
ただ、最初のシーンから重苦しすぎて、2人が何かの罰で労働させられるのかと思ってしまった。適度の距離感もほしかった。2時間9分。
★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2018年5月18日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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