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記者会見で東京都の受動喫煙防止条例案を説明する小池百合子知事

記者会見で東京都の受動喫煙防止条例案を説明する小池百合子知事

他人のたばこの煙を吸い込む受動喫煙について、対策強化の取り組みが進んでいるようね。きっかけの一つとされる2020年東京五輪・パラリンピックが近づくけど、焦点の飲食店は禁煙になるのかな。

飲食店での喫煙などが今後どうなるかについて、酒井麻由美さん(37)と熊沢靖子さん(46)が石鍋仁美編集委員に聞いた。

――どんな受動喫煙の対策があり、議論になりましたか。

喫煙者の主流煙を、他人が副流煙として吸うのが受動喫煙です。ニコチンやタールといった有害物質は副流煙が主流煙の約3倍以上とされ、厚生労働省によると受動喫煙による肺がんや心臓疾患などで年1万5千人が亡くなっています。国民の健康に加え、受動喫煙に関する推計3千億円規模の医療費を減らすためにも重要な政策課題です。

政府は3月、受動喫煙対策を事業者らに義務付ける健康増進法改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指しています。飲食店は原則禁煙とし、罰則もありますが、議論を呼ぶのは「例外措置」です。客席面積100平方メートル以下などの既存店は、表示をすれば喫煙も認めるのです。厚労省の推計によると、55%の飲食店で例外規定が適用されることになります。

――どのような課題が残っていますか。

実は、厚労省は飲食店も事務所などと同様、例外なしの禁煙を目指しました。しかし、たばこ産業や小規模の飲食業への影響を理由に、自民党内から反対論が続出したのです。厚労省は17年、店舗面積30平方メートル以下のバーやスナックなどをのぞく飲食店を原則禁煙とする「妥協案」を公表しました。ところが同案さえ自民の批判は強く、当初よりかなり後退したのです。

がん患者団体や医師らは規制案の後退を批判しました。受動喫煙を避けたい人も、取引先や上司が「吸える店」を希望すれば拒否しにくいでしょう。今の案では、受動喫煙の影響が未解明の加熱式たばこも、喫煙室を設ければ吸えることになります。自民党には新規店の禁煙になお不満もあり、喫煙を巡る溝はなかなか埋まりません。

――当面、どんな流れになりそうですか。

国際オリンピック委員会(IOC)は2010年、世界保健機関(WHO)と「たばこの煙のない五輪」推進で合意しています。以降の五輪開催地は、原則として屋内禁煙になりました。現行の日本は受動喫煙の対策を事業者の努力義務としており、WHOの4段階評価で最低です。厚労省が改正案の成立を急ぐのは、20年の五輪開催を控え、世界の視線もあるからでしょう。

しかし改正案が成立し、東京五輪前に施行されても、WHOの評価は1ランクしか上がりません。わかりにくい規制に外国人旅行者は戸惑いそうです。日本たばこ産業(JT)の調査では17年、国内成人の喫煙率は18.2%と過去30年で半減しており、むしろ「全面禁煙」で集客に成功する飲食店が増えるかもしれません。

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