サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会が6月14日に開幕する。4年に1度の祭典ごとに進化しているのがボールだ。主な団体球技でボールがこれほど頻繁に変わるのはサッカーだけ。その歴史をたどってみた。
近代サッカーの発祥は1863年、イングランドでルールを統一し、協会を設立したときとされている。創生期のボールは牛のぼうこうを膨らませ、牛革で覆ったものだった。革は厚く、大きさもバラバラ。あまりに硬いため、防護用の帽子をかぶってプレーすることもあった。
その後、ぼうこうの代わりにゴムを使うなどの変化はあったが、1930年の第1回ウルグアイ大会から30年以上、長方形に近い形状の牛革(パネル)を縫い合わせたボールを使った。色は革そのものの茶色が一般的だった。
06年ドイツ大会から完全防水
見た目に大きな変化が起きたのは60年代だ。茶色一色では白黒テレビで見えにくい。解決策として誕生したのが、黒の正五角形の革12枚と白の正六角形の革20枚、計32枚の白黒パネルで覆ったボールだ。これなら画面を通しても見やすく、ピッチで映えることから世界中に広がった。
32枚のパネルを使う手法は、古代ギリシャの数学者アルキメデスが考案した立体「切頂二十面体」にヒントを得た。68年メキシコ五輪で使われ、W杯には70年メキシコ大会で登場。「テレビジョン」と「スター」を合わせて「テルスター」と名付けられた。
86年メキシコ大会の「アステカ」では初めて人工皮革が使われた。水を吸って重くなる天然皮革に比べ、耐水性が格段に向上した。