2018/5/6

病気・医療

岐阜県多治見市は14年5月、「TGK48プロジェクト」と銘打った取り組みを始めた。「TGK」は「多治見・元気・高齢者」の頭文字の意味。約60人のシニアでつくるグループが週1~2回、独自の振り付けでヒップホップダンスを1時間半練習し、年20回ほどイベントでもダンスを披露している。平均年齢は72歳で最高齢は83歳という。

同市は岐阜大と協力して、毎年メンバーの体力を測定。結果を比べると、敏しょう性が改善しているとの結果が得られたという。「元気なシニアが活躍する活気ある市をつくっていきたい」と市の担当者。県外の自治体から活動内容の問い合わせが相次いでいる。

ダンス指導者の養成にも取り組む14年10月に設立された日本介護予防ダンス協会(三重県朝日町)は、ヒップホップや歌謡曲のリズムに合わせて体を動かす「元気ダンス」を推進している。介護予防の知識やダンスの講習を受けて試験に合格すれば、同協会認定の指導者となる。約150人の指導者が全国で活動中だ。

同協会の担当者は「ヒップホップで使われる曲はリズムがはっきりしているものが多く、初心者でも音楽に合わせて足踏みや手拍子がしやすい。今後は介護予防でダンスを始めるシニアが増えると思うので、指導者を育てていきたい」としている。

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入念に準備運動/無理せずに

ヒップホップダンス教室は初心者のシニアも多い。介護予防への効果が期待される一方、慣れない運動は体への負荷が大きくなる恐れもある。高齢者のスポーツ医学に詳しい近畿大医学部の福田寛二教授は「ウオーキングやストレッチといった準備運動を入念にし、自分のペースで続けることが大切だ」と助言する。

ヒップホップダンスは、両膝を軽く曲げて体を上下する「ダウン」の動きが基本。スクワットに似た動きを繰り返すため、急激な運動は膝や腰への負担がかかりやすいとされる。心筋梗塞や脳卒中を引き起こす恐れもある。「ダンス中はこまめに水分補給を心がけてほしい」(福田教授)

介護を必要とせず、自立した生活を過ごせる期間を示す健康寿命への関心が高まっている。福田教授は「シニアの運動は健康寿命を延ばすのに効果的。無理なく続けて」と話している。

(島田直哉)

[日本経済新聞夕刊2018年4月25日付]

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