三重県知事、カジダンへの道 ワンオペ育児やってみた
ワンオペ育児。店で働く人が1人で全ての仕事をするワンオペレーションから転じ、主に母親が1人で家事育児をする状況を指す。
私も公務のない日曜日に限ってだが、妻が仕事で不在のため、1人で一日中、2人の子供の育児と家事を担った経験がある。これがめちゃめちゃ大変だった。
まず、5歳の長男と当時1歳の長女の世話を同時にしながらだと、自分がトイレに行くタイミングが見つからない。2人がおとなしくしている隙に今がチャンス、とトイレに入るとすぐに「パパ―、どこ?」と長男が大声で叫ぶ。一事が万事そんな感じで、自分のことをする時間がとにかくない。
失敗したのは、長女に昼寝をさせすぎたこと。長男への対応だけすればよいからラッキー、と思ったのが間違いだった。
夕方に目を覚ました長女は、たっぷり寝たため夜になっても目がらんらん。元気いっぱいで部屋中走り回る。長男は長女のせいで寝られずイライラ。一時的に楽になるのを求めるのではなく、一日をトータルでみてスケジュール管理をしなければと思い知った。
元気な長女は夕食も大量に食べた。「よう食べてくれた。よかった」と思っていたら、ここにも落とし穴が。長男がようやく寝て、長女も大騒ぎしながら何とか寝た後のこと。ひと息ついていたら、長女がギャンギャン泣き出した。おむつの中には爆弾ウンチが……。夕食を食べすぎたのだろう。
大泣きする長女を風呂場へ連れていき、体を洗った。これで長男が起きたらもう対応できない、と不安になり「兄貴頼むよ、今は寝ていてくれ」と願いながら。
ワンオペは物理的に大変なだけではない。いろんなことが同時に気になったり、不安になったりしながら育児と家事をまわしていかなければならない。精神的な負荷もかなり大きいと痛感した。
休みの日に少しワンオペするだけでこんなにキツいのだから、女性が毎日、継続的に1人で家事と育児を担うのはどれほど大変なことか。これはワンオペした経験がないと実感できないと思う。
私の場合、妻がカレーを作り置きしていってくれたおかげで、苦手な料理をする必要はなかった。もし料理の問題が事前に解決できていなかったら、もっと焦ったかもしれない。男性が慣れないワンオペをするなら、苦手な家事育児のメニューを事前に洗い出し、解決策を講じておくことを勧める。
海外ではワンオペなどという状況はあまり聞かない。日本の男性が家事育児に参画できないのは、長時間労働が大きな原因の一つ。働き方改革が日本中で進み、いつか、ワンオペ育児という言葉がなくなる日がくることを、心から願っている。
東京大学卒、通産省(現経済産業省)に入省。約10年務め退官し、2011年三重県知事に(現在2期目)。兵庫県出身、43歳。妻はシンクロナイズドスイミング五輪メダリストの武田美保さんで、現在2児の父。
[日本経済新聞夕刊2018年4月24日付]
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