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国民の1~2割が抱える慢性の痛み、チーム診療で緩和

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NIKKEI STYLE

腰痛や関節痛、けがによる痛みなどが3カ月以上続く「慢性疼痛(とうつう)」は家事、学業など日常生活に悪影響を与える。国民の1~2割がこうした痛みを抱えているとみられ、心理的な要因など身体的なもの以外が関係することも多い。そのため医師だけでなく、臨床心理士や理学療法士など多職種で診療する医療機関が増えてきている。

中部地方に住む40代の主婦、山田綾子さん(仮名)は4年前から全身の痛みで家事ができず、終日横になっている状態が続いた。原因は分からず、いくつもの病院に通って薬を処方されても改善しなかった。

そんな山田さんは2007年に愛知医科大学(愛知県長久手市)の「学際的痛みセンター」を受診。同センターは02年に日本で初めて創設された総合的な痛みの診療・研究施設。牛田享宏センター長は「整形外科、麻酔科、精神科、歯科の各医師と看護師、臨床心理士、理学療法士によるチーム医療で、併任が多い他の病院と違って多くのスタッフが常勤なのが特徴」と解説する。

山田さんを診察した松原貴子客員教授(現・神戸学院大学教授)は「活動的な人なので、運動を組み込んだ治療法が向く」と判断。心理療法の一つである認知行動療法の理論を採り入れた運動療法を選択した。

「この治療法のポイントは治療のゴール(目標)とプログラムを自分で決めること」と松原客員教授。山田さんはゴールとして「家事ができるようになる」と「趣味のトレッキングを再開する」の2つを設定。食事の配膳から始め、2カ月目に洗濯物の取り込みを加えるなど少しずつできることを増やしていき、3カ月目には調理ができるまでになった。

慢性疼痛の患者は活動しすぎる人と、逆に活動しなさすぎの人が多いという。山田さんは活動量が少なすぎたため「活動量を徐々に増やして痛みのリスクが少ない、程よい活動量を見つけるのが狙いだった」(松原客員教授)という。その結果、痛みの程度を示す値が初診時に比べ4分の1に低下。夫とトレッキングに行くまでに回復した。

思考を前向きに

慢性疼痛には、帯状疱疹(ほうしん)後の神経痛や、脊髄の障害で神経が異常に興奮することで起こる神経障害性のほか、線維筋痛症など原因が分からない疾患による痛みなど様々な疾患によるものがある。重症患者の中には心理的要因が強く影響している患者もいる。

「魔法のような特効薬はない」という同センターの精神科医、西原真理教授は「『痛みはあるけれど、色々なことに挑戦したい』というように前向きな思考にシフトさせるのが精神科医の役割」という。

大阪大学病院(大阪府吹田市)の疼痛医療センターでは初診患者に医師、リハビリの専門職、臨床心理士が面談。医師が痛みの部位や程度、頻度などを問診。理学療法士や作業療法士は生活や仕事の状況を聞き取ったり歩行など体の動きを見たりする。臨床心理士は精神面を中心に睡眠の状況やストレスの程度を聞き取る。そのうえでこれらの専門職が原因を議論する。

同大学大学院医学系研究科の柴田政彦教授(疼痛医学)は「けがなどが治っても痛みが続く場合は家族関係や仕事上のストレスなどが背後に隠れているケースが少なくない」と指摘。多職種で原因を議論するのは「身体的以外の要因を見つけ出して治療につなげるのが狙い」という。

患者増受け対策

「患者は痛みを積極的に医療者に訴えるべきだ」という考えが強い欧米諸国には専門のセンターが多いが、「痛みは我慢するのが美徳」と考えがちな日本では普及が遅れてきた。

それでも患者の増加を受けて対策が動き始めた。

厚生労働省の検討会は10年、(1)医療体制の構築(2)医療者の教育と国民への啓発(3)情報提供、相談体制の充実――などを提言。医学部教育の指針となる「医学教育モデル・コア・カリキュラム」は16年度改訂版で慢性疼痛に関する内容を拡充した。18年3月には関連学会などによる治療ガイドラインも完成した。

認定NPO法人「いたみ医学研究情報センター」(いたみラボ)は設立した11年から電話相談窓口(電話0561・57・3000、平日の午前9時~午後5時)を開設し、これまで約2800件の相談に対応した。

同年には愛知医大の牛田センター長を中心に10の大学病院が連携する「痛みセンター連絡協議会」が立ち上がった。所属機関は約20施設に増え、「慢性の痛み政策ホームページ」(http://www.paincenter.jp/businessguide.html)で紹介している。

◇  ◇  ◇

慢性疼痛 脳内の神経が変化し持続

痛みが慢性化するメカニズムは脳科学の進歩で明らかになってきた。

短期間で消失する急性の痛みはけがなどによって生じる痛み成分が末梢(まっしょう)神経を刺激するため起き、病巣や炎症などが治れば鎮まる。慢性の痛みは苦痛に関わる脳内の神経回路が変化して苦痛が持続的に生じやすくなるために起き、病巣や炎症などが無くなっても痛みが消えないという。

東京慈恵会医科大学(東京・港)は2014年、痛みの機構解明と治療法の開発を目指し「痛み脳科学センター」を創設。センター長の加藤総夫教授は「痛みは、生体に起きている何らかの異常を生体自身に伝える警告信号。有害状況を回避して生き延びるために不可欠なメカニズムとして進化の過程で獲得した機能だ」と指摘する。

慢性疼痛の患者の多くは「いつも痛みのことばかり考えてしまう」と訴えるが、加藤教授は「痛みが高い優先度で患者の意識に割り込んで警告信号を発し続けるため」と説明。そのため「治療の目標は痛みをなくすことではなく、痛みを気にならなくすることになる」と話している。

(編集委員 木村彰)

[日本経済新聞朝刊2018年4月23日付]

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