気温上昇中、今年は春から脱水対策
冷房効いた屋内でも水分補給 乳幼児・高齢者は注意
気象庁によると、2018年4~6月の気温は平年に比べ高くなる見込みという。脱水対策は通常、暑い夏の熱中症予防の位置づけだが、今年は春のうちから必要だ。脱水症状の気づき方や予防法などを専門家に聞いた。
今年の春は各地で桜の開花が早まり、最高気温を更新するなど、記録的な暖かさだ。そこで重要なのが脱水対策。たかせクリニック(東京・大田)の高瀬義昌理事長は、「季節の変わり目は自律神経のバランスが崩れ、暑さに順応しにくい。今年のような急激な暑さは脱水を招きやすくなる」と警鐘を鳴らす。
脱水とは、体の中の水分と塩分などの電解質が不足した状態。体重の1~2パーセント相当が減るとのどの渇きや尿量の減少がみられ、体重の3~9パーセント分が減ると、全身の倦怠(けんたい)感や頭痛、めまい、血圧の低下などが起こる。
「脱水が怖いのは、血液の流れる量が減り、心筋梗塞や脳梗塞の原因になること」と東邦大学医療センター大森病院(東京・大田)総合診療・急病センターの佐々木陽典助教は指摘する。
特に注意が必要なのが高齢者。総務省消防庁の「熱中症による救急搬送状況」では高齢者が約半数を占める。その理由を高瀬氏は「加齢により体液の貯蔵庫でもある筋肉量が減り、体に水分を蓄えにくくなる。腎臓の機能も落ち、体内に水分や電解質を留める力も低下する」と説明する。
高齢者は食べる量が減り、のどの乾きを感じにくくなるのに加え、頻尿や失禁を恐れて水分や電解質を十分に摂取しない傾向がある。服用する薬の影響で、脱水を助長する場合もある。
一方で「乳幼児は大人に比べると多くの水分が必要だが、体重に比べて体表面が大きく、気づかぬうちに水分を失いがち」と佐々木氏は指摘する。「発汗や腎臓の機能が十分に発達しておらず、脱水を起こしやすい」。自分ではのどの渇きを訴えられない乳児の場合、機嫌が悪いといったサインを見逃さないことが大切だ。
脱水の最大の予防策は、こまめに水分と塩分をとること。発汗以外に呼気や皮膚から水分が出る「不感蒸泄(せつ)」は、成人で1日約500~900ミリリットルに上る。脱水というと暑い中での作業時に起きる症状というイメージがあるが、エアコンの効いた屋内でも起こる。
「乾燥した空気や扇風機の風などにより、不感蒸泄の量が増える一方、暑くないから大丈夫と考え十分な水分を摂取しないと起きる」と高瀬氏。「特に高齢者は、喉が渇かなくても水分補給を」
水分補給のタイミングは、就寝や入浴、運動の前後と運動中、外出前や飲酒後。高瀬氏は「外出の前や食欲がない時、下痢の時は経口補水液を飲む」ことを勧める。
ミネラルウオーターなど水分のみの摂取だと、塩分が薄まって塩分欠乏タイプの脱水になる可能性がある。「高齢者は特に、塩分欠乏性脱水が幻覚や幻聴などのせん妄を引き起こし、判断力を低下させてさらに脱水になるという悪循環に陥る」と高瀬氏。
効果的に水分と塩分を吸収するには、経口補水液が適している。適度な塩分とその吸収を促す糖分がバランスよく含まれるためだ。スポーツドリンクは経口補水液に比べ、塩分が少なく糖分が多い。水分補給の目的で飲み過ぎないようにしよう。
食事をしっかりとることも脱水予防につながる。通常、成人が1日に摂取する水分は約2.5リットルで、うち1リットルは食事から取っている。「みそ汁やスープなら、塩分も一緒にとれる」(佐々木氏)。十分な水分を蓄えられる体にするため、適度な運動で筋肉をつけることも大切だ。
(ライター 武田京子)
[NIKKEIプラス1 2018年4月21日付]
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