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型破りのみそ天丼、自然の恵みどっさり 長野・諏訪

2018/4/19付 日本経済新聞 夕刊

凍り豆腐の天ぷらを御柱祭の御柱に見立てている(秋月そば本店)

 天丼といえば、しょうゆベースのたれで味わうのが普通だ。長野県諏訪市の飲食店はそんな常識を打ち破り、みそだれの「信州諏訪みそ天丼」を提供している。ご当地グルメとして13年。地元の味として定着しているが、まねできないのが豊富な食材だ。

みそ天丼が食べられる店はのぼり旗が目印(いずみ屋の宮坂社長)

 諏訪湖に精密機器産業、霧ケ峰。諏訪市の知名度は高いが、グルメには目玉がなかった。そこで地元の飲食店が15年ほど前、名物料理をつくろうと立ち上がった。割烹(かっぽう)レストランのいずみ屋を経営する宮坂友子社長(47)だ。地元の料理コンテストで表彰されたのを契機に、市内の飲食店に参加を呼びかけ、2005年から提供を始めた。

 飲食店が参加する条件は「地元のみそを使う」「地元の食材を1つ以上使う」こと。現在の参加店は13店。基本レシピはあるが、店が変わると味付けも異なる。具材も店ごとに違いがあるので、食べ歩く楽しみもある。宮坂社長は「地元の方に日々来てもらいたい」と狙いを話す。

 いずみ屋では、みそを鍋でこがして香ばしさを出している。具材は諏訪湖産のワカサギに川エビが定番だ。漁業の投網にみたてた素揚げそばが茶わんを飾る。

 秋月そば本店は自慢のそばつゆがベース。かつおだしの風味がたれの甘みを引き立たせている。女将の秋山和子さん(70)は「こくがでるように砂糖ではなく、ざらめを使用している」と話す。

 具材はワカサギ・川エビに地元の名産「凍り豆腐」を棒状にしたものが入っている。諏訪地方の「御柱祭」の御柱に見立てたという。野沢菜やフキノトウも入っており、かなりのボリューム感だ。

魚魚亭のみそ天丼は辛みが特徴で、コチュジャン入りのみそ玉が付く

 一方、辛口で勝負するのは居酒屋の魚魚亭。店主の大久保淳さん(51)は「新規参入なので他店と違った味を考えた。みそと言えばみそラーメンなので、その味を出したかった」と解説する。みそだれはトウバンジャン入りの辛みそ、付け足し用にコチュジャンのみそ玉を添えている。

 各店舗の具材は季節で変わることもある。秋に食べたいのが、諏訪市の隣の茅野市で採れる「糸萱(いとかや)かぼちゃ」だ。戦国時代に武田信玄が鉄を採掘していた場所だけに、鉄分は通常の2倍。ほくほく感も強いという。

 湖と山々に囲まれた諏訪市。その自然の恵みが、みその産地をつくり、豊富な食材を生み出し、ご当地グルメの発展の可能性を支えている。

<マメ知識>漁業の街に危機迫る
 長野県諏訪地方は海のない長野県を代表する漁業の街でもある。中でも有名なのがワカサギだ。1970年代には漁獲量が300トンを超える年もあり、地元漁協は諏訪湖に流入する河川に遡上するワカサギから採卵し、全国各地に出荷している。
 ただ漁獲量は年々減少し、現在は10トン前後に、エビ類は1トン未満にまで落ち込んでいる。2016年にはワカサギの大量死が発生するなど、漁業の街は危機にさらされている。ワカサギや川エビを食材に使うみそ天丼の店にとって悩ましいところだ。

(松本支局長 竹内雅人)

[日本経済新聞夕刊2018年4月19日付]

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